著者のコラム一覧
太田治子作家

1947年生まれ。「心映えの記」で第1回坪田譲治文学賞受賞(86年)、近著に「星はらはらと 二葉亭四迷の明治」(中日新聞社)がある。

世界50カ国58人のおばあちゃんの自慢料理

公開日: 更新日:

「世界のおばあちゃん料理」ガブリエーレ・ガリンベルティ著、小梨直訳 河出書房新社 1600円+税

 母一人子一人の母子家庭で育った私は、小さいころからおばあちゃんに憧れていた。「世界のおばあちゃん料理」の表紙のおばあちゃんを見て、びっくりした。昔、よく銭湯でお見かけしたおばあちゃんにそっくりだった。白髪の愛らしいおばあちゃんである。

 早速、彼女の料理のページを開いてみた。フェルナンダ・デ・ギアさん、71歳。あれ、まだお若いんだ。マニラに暮らしている彼女を、イタリア人のカメラマンのガブリエーレ・ガリンベルティさんが訪ねた。トスカーナの田舎町で育った彼は、「おばあちゃん子」だった。世界50カ国、58人のどのおばあちゃんとも仲良くできた。あでやかな58歳のコロンビア、ボゴタのカルメンさんが料理はおいしいコーヒーよ、とにんまりしている写真もおかしい。写真に添えられた文章も、それは温かく伝わってくる。

 レシピも、丁寧だ。息子が3人に孫は5人のフェルナンダさんは、いつも食事は近所の子供たちが集まってきて一緒に食べるという。彼女の得意料理は、シニガン。豚肉と野菜入りタマリンドのスープである。タマリンドは、マメ科の一種らしい。しかしこれは、日本の豆で代用できそう。早速、作ってみたくなった。

 ノルウェーはベルゲンのシノーヴェ・ラスムッセンさん77歳の作るキョツパ、おいしそうである。アイスランド風牛肉と野菜のスープは、寒さを吹き飛ばすのに最高だろう。彼女は、夏に孫の小さな男の子が来たとき、世界一しあわせなあばあちゃんになる。

 サンパウロのマリアさんは、43歳。もう孫がいるとはいえ、おばあちゃんというにはいかにも若すぎる。結婚しようとしない娘を持つわが身が、ふと思われた。

 本の冒頭には著者最愛のおばあちゃん、マリーザさん。最後のページは母のパオラさんの笑顔が登場する。小学校の先生のマンマは、実は料理があまり得意ではない。お菓子のティラミスだけはおいしく作れるというところが、ほほ笑ましい。

【連載】生き生きと暮らす人生読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  2. 2

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  3. 3

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  4. 4

    ドジャース内野手ベッツのWBC不参加は大谷翔平、佐々木朗希、山本由伸のレギュラーシーズンに追い風

  5. 5

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  1. 6

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  2. 7

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  3. 8

    維新のちょろまかし「国保逃れ」疑惑が早くも炎上急拡大! 地方議会でも糾弾や追及の動き

  4. 9

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  5. 10

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方