「国立科学博物館のひみつ地球館探検編」成毛眞著 国立科学博物館監修

公開日: 更新日:

 1877(明治10)年創立という、日本で最も歴史がある博物館のひとつ、国立科学博物館の見どころ、遊びどころを案内してくれるビジュアル・ガイドブック。

 同館は上野公園内にある日本館と地球館に加え、筑波地区の研究施設と実験植物園、白金台の付属自然教育園で構成されている。本書では、地球館と筑波実験植物園、付属自然教育園を取り上げる(日本館と研究施設分は既刊で紹介)。

 まずは地球館の1階、玄関とでもいうべき場所にある「地球史ナビゲーター」へ。ここは2015年のリニューアル後の目玉展示のひとつで、宇宙138億年、生命の約40億年、そして人間の数百万年というスケールの異なる3つの歴史を、巨大スクリーンなどを駆使して俯瞰する。

 スペースの中央には、「アロサウルス」の骨格標本(写真①)や、1576年にアルゼンチンで見つかった隕石「カンポ・デル・シエロ隕石」、そしてJAXA(宇宙航空研究開発機構)から借りている「気象衛星ひまわり1号」のプロトフライトモデル(予備機)が鎮座する。

 地球館のスターであるこのアロサウルスは、日本に恐竜の骨格標本がないことを知ったある実業家が私財を投じて、手に入れた化石を寄贈してくれたものだという。最新の学説に基づき、展示のポーズも以前とは変わっているそうだ。

 著者が展示を見ながら館内を巡り、同館のスタッフである各分野のスペシャリストから解説を聞く対談を紙上で再現。

 陸上生物の多様性を伝えるスペースに展示されたインドネシア・ボルネオ島から運び込んだ巨木(写真②)や、マレーシアのエンダウ・ロンピン自然保護区にある1本の木に生息していた昆虫とクモを合わせて1万2382匹すべての標本化など、展示物の解説はもちろん、その裏話や苦労話まで披露。読者もスペシャリストの解説を聞きながら、臨場感たっぷりに館内を楽しめるという趣向だ。

 チベットの「セイタカダイオウ」という植物などは、採集の許可は出たものの、日本への持ち出しが許されなかったため、業者に標高4000メートルの現場まで同行してもらって、その場でレプリカを作り上げたという(写真③)。

 その他、科学と技術の歩みをたどる2階、生命の進化の道筋を紹介する地下2階など、地上3階地下3階のすべてのフロアを解説。

 展示されている品々は、約440万点という膨大な収蔵品のほんの一部でしかない。展示方法や解説にひと工夫もふた工夫も加えられ、いまや博物館は一日中いても飽きることがない場所となっている。

 子どもはもちろん、大人も十分に楽しめる博物館にGO。(ブックマン社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ