星条旗の星の一つは赤い丸になるだろう

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「憲法くん」松元ヒロ著 講談社

 いま、最もシャープな笑いを提供しているのは松元ヒロである。その持ちネタの一つが、自らが“日本国憲法”になる「憲法くん」だが、彼はいま、困っているのではないか。それは、安倍晋三が笑えない喜劇を連発しているからである。シロをクロと言い、クロをシロと言う。これでは笑いは成り立たない。

 安倍は笑いがない人で、むしろ、笑われる人だが、笑いを締めつけることに熱心である。統制論者なのだ。

 たとえば、昭和天皇が亡くなった時、殺されたのは笑いだった。

 そう言ったら、松元は「はいはい、歌舞音曲の自粛。そうでしたね。笑いを抑えますね。笑いものにするなとか、真面目になれとか」と答え、こう続けた。

「いつもそうですよね。軍国主義に進むということは真面目になれということで、お笑いというのはそれと一番対極にありますね」

 だから、安倍の敵は松元ヒロなんだ、と水を向けたら、松元は「ヘッヘッヘッ。うれしいことですね。そのくらい向こうが思ってくれているかどうか、私は敵だと思っていますけどね」と肯定した。

 新宿の紀伊國屋ホールなどでのライブは満席になるが、松元の芸を見に来て楽屋にやってきたディレクターたちは「いやぁ、面白かった。しかし、絶対テレビには出せない」と異口同音に語っていくという。

 弱肉強食の新自由主義ならぬ原始自由主義の下、強い者はどんどん強く、大きい会社はますます大きくなる。グローバル化とやらで、日本は米国に吸収されるかもしれない。

 いや、安倍はむしろ、それを望んでいるのではないか。

 もし、合併されれば国旗も国歌も変わる。国旗は、米国の星条旗の一つの星が赤い丸になるだろう。国歌は頑張って、曲はしょうがないとしても、詞は「君が代」にしてもらう。

 そう前提した松元には「星条旗よ永遠なれ」のメロディーで、「君が代は千代に八千代に」と歌い始めるネタも備わっている。

 松元が心配しているごとく、憲法をリストラする動きが強くなっているが、この童話が広く読まれることを期待したい。★★★(選者・佐高信)

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