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飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長

環境エネルギー政策研究所所長。1959年、山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。脱原発を訴え全国で運動を展開中。「エネルギー進化論」ほか著書多数。

“住宅貧乏”から抜け出す法

公開日: 更新日:

「ホントは安いエコハウス」松尾和也著/日経BP社2200円

 全身に使い捨てカイロを貼った裸の男が真冬の雪の中に出ていく写真に、いきなり驚かされる。日本の住宅の現実は、そういう状態だと著者は指摘する。この写真に限らず、副題に「省エネ住宅のプロも陥る25の勘違い」とある通り、本書を読むと目からウロコが25枚剥がされる。

 ところで、日本は世界に冠たる省エネ国家じゃなかったっけ? 本書を読むと、それは国のプロパガンダに過ぎず、日本の住まいの現実はお寒い限りだということが分かる。

 日本の住宅の実に8割が「断熱なし」で、日本で本当に暖かい住宅を知っているのは10人に1人しかいないという衝撃の事実。だから、工務店や大手のハウスメーカーといえどもエコハウスを設計できる人はほとんどいないと、著者は指摘する。

 特に日本の窓はお粗末で、そのため冬は暖気の6割が窓から逃げ、夏は7割の熱気が窓から入ってくる。だから既築にお住まいの方も、安く簡単に冬暖かく夏涼しくできる工夫も提案されている。

 食器洗浄機の活用やレンジフードの設計、電気温水器の入れ替えだけでも大幅に省エネと光熱費削減ができることを、具体的な事例や数字で次々に解説していく。

 エコハウスや住宅をめぐって蔓延しているさまざまな「迷信」が著者によって次々に覆され、論破されていくさまは小気味よい。

 災害にも強く、周辺環境や家族構成などの変化にも対応できる。末永く暮らせ、そして何よりも夏も冬も過ごしやすく、光熱費もほとんど掛からない。そういうエコハウスは誰にも手の届くところにあることが分かる。

 これから住宅を建てたい方はもちろん、すでに建てた方も賃貸の方もぜひご一読を。裸にカイロを貼ったような「住宅貧乏」から抜け出す道が見えるかも?

【連載】明日を拓くエネルギー読本

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