著者のコラム一覧
飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長

環境エネルギー政策研究所所長。1959年、山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。脱原発を訴え全国で運動を展開中。「エネルギー進化論」ほか著書多数。

安倍は「ストーカー男」のように原発に執着

公開日: 更新日:

「日本はなぜ原発を拒めないのか――国家の闇へ」山岡淳一郎著

 原発投資を失敗した東芝が上場廃止から解体に向かいつつある。福島第1原発事故を起こした東京電力は事実上破綻し国有化された。原発事故の避難者は置き去りにされ、20兆円から70兆円もかかる「廃炉」はおろか汚染水すら処理のめどが立たない。六ケ所再処理工場や核燃料サイクルも事実上破綻し、「10万年」もの管理を要する核のゴミの行方が決まろうはずもない。何と言っても、3.11を経験した私たち国民の8割は脱原発を求めている。

 こうして、今や日本の原発は全方位で崩壊状態にあるにもかかわらず、日本は、いや安倍政権は「ストーカー男」のように原発に執着し、電力会社はひたすら原発再稼働に突き進み、国が立ち上げたエネルギー基本計画改定の審議会では原発新増設を求める声ばかりだった。なぜなのか。

 かつて「日米原子力協定のために日本は脱原発できない」という議論も見られたが、本書は、そうした大ざっぱな俗論には立たず、「国家の闇」に一つ一つ丹念に光を当てながら、絡み合った要因を読み解いてゆく。

 電力会社が脱原発によって債務超過に陥る恐れ、国策民営が生み出した「政官財学報の原子力ペンタゴン」、いわゆる原子力ムラ、潜在的に核武装できるオプションを持とうとする政治的な野心、そして原発に依存した自治体の国策依存。

 本書は、こうした原発のまわりに政治の固い殻が取り巻いていることを明らかにした上で、これらがいずれも政治的な意思と建設的な政策によって解き放たれることを、南相馬市など具体的な事例を挙げつつ解説してゆく。

 すでに原発は、衰退産業から死のスパイラルに入った。廃炉から再興へ、そして海外では発電価格で3円を切った太陽光発電など世界的な成長産業である再生可能エネルギーへと、「大局を踏まえた選択へ、民意は静かに燃えている」(同書)。

【連載】明日を拓くエネルギー読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択