著者のコラム一覧
飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長

環境エネルギー政策研究所所長。1959年、山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。脱原発を訴え全国で運動を展開中。「エネルギー進化論」ほか著書多数。

顔の見える「志金」で地域の課題解決

公開日: 更新日:

「はじめよう、お金の地産地消」木村真樹著 英治出版 1600円+税

 アベノミクスでは何十兆円という桁違いの大きなお金が「金融緩和」される一方で、わずかな資金が足りずに倒産に追い込まれる中小企業もある。

 私たちの暮らしでも切っても切れないお金には2つの種類があるようだ。

 一つは、ひたすら利を追い求めて地域社会や環境を破壊しながら一瞬にして世界を駆け巡り、時に投機やバブルを引き起こす巨額で欲望の詰まった「ギラギラしたお金」。もう一つは、人の顔や地域社会との関係性が見える、ゆっくりとした「キラキラしたお金」。本書は、後者のお金の話だ。

 民間非営利団体(NPO)は全国におよそ5万あり、ほとんどは融資も得られず資金繰りに苦労している。そうした団体のために著者が東海地方で12年前に立ち上げたNPOバンクはその後、1件の貸し倒れもなく、限界集落の支援や子育て支援、高齢者・障害者福祉、環境保護などに挑戦する人たちを応援してきたという。

 その秘密は、1件の融資審査におよそ30人が申請者を取り囲んで質問を重ねながら、その社会事業の過去・現在・未来をバランス良く見るからだという。財務諸表だけで無機質に融資審査する大抵の金融機関とは異なり、人の縁や地域社会とのつながりを通して、出し手と受け手との顔の見えるお金の流れをつくるのだ。これを筆者は「志金」と呼ぶ。

 本書は、地域社会に貢献しようと地方銀行に就職した著者が矛盾にぶつかり、悩み模索し挑戦して社会金融家へと成長していく自伝でもある。転機となったキーワードは「当事者」だ。さまざまな社会課題や環境問題などに無関心な傍観者だった人でも、ふとしたきっかけで「当事者意識」を持てば、地域社会の課題解決をリードする社会事業家に成長しうる。

 とすれば、この「志金」は単なるお金を超えて、若き社会事業家を拡大再生産しているのかもしれない。

 ニッポンの「失われた20年」の足元で、そうした次代の若者が数多く育っていることをうかがわせる一冊だ。

【連載】明日を拓くエネルギー読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    桑田佳祐も呆れた行状を知っていた? 思い出されるトラブルメーカーぶりと“長渕ソング騒動”

  2. 2

    長嶋一茂の「ハワイで長期バカンス&番組欠席」に大ヒンシュク !テレ朝局内でも“不要論”が…

  3. 3

    長渕剛に醜聞ハラスメント疑惑ラッシュのウラ…化けの皮が剥がれた“ハダカの王様”の断末魔

  4. 4

    「俺は帰る!」長嶋一茂“王様気取り”にテレビ業界から呆れ声…“親の七光だけで中身ナシ”の末路

  5. 5

    正捕手・甲斐拓也の骨折離脱が巨人に「プラス」の根拠とは???

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    異常すぎる兵庫県政…中学生記者が初めて出席した定例会見での斎藤元彦知事には、表情がなかった

  3. 8

    元女優にはいまだ謝罪なし…トラブル「完全否定」からの好感度アップ図る長渕剛のイメチェンSNS

  4. 9

    キャッスルで結婚式を挙げるはずが…「派閥の親分」の一言で断念、ヒルトンになった

  5. 10

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ