「日本の祭り」小川秀一・山梨将典・山梨勝弘・富田文雄・佐藤尚写真

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 小さな村の昔ながらの祭りから、観光の目玉となり何十万もの人が押し寄せる有名なお祭りまで、全国津々浦々に先祖たちから連綿と受け継がれてきた大小さまざまなお祭りがある。そんなあまたあるお祭りの中から、「伝統があり美しく迫力がある」お祭りを厳選して紹介する写真集。

「むこ投げ」(毎年1月15日)は、江戸時代から松之山水越地区(新潟県十日町市)に伝わる小正月行事。村の娘を嫁にもらった婿が、藪入りの初泊まりの際に4~5メートル崖下の雪の中に投げ落とされるというもの。

 その起源は、嫁を追い出させないためとか、よそ者に村娘を略奪された若者の腹いせなど諸説あるそうだ。

 そんな何とも素朴でほほ笑ましい行事があるかと思えば、2月の第3土曜日に岡山市の西大寺で行われる「会陽」は、ふんどし一丁の何百という裸の男衆が宝木をめぐって壮絶な争奪戦を繰り広げる奇祭。寺が配布する護符を求めて人々が殺到したため、投げ与えたことが起源だ。

 以後、開催順に約90もの祭りを最高のアングルによる大迫力の写真で紹介。まさに特等席で祭りに参加しているかのような臨場感だ。

 もちろん、東京浅草の「三社祭」(5月)や福岡県「博多ギ園山笠」(7月)、富山県越中八尾の「風の盆」(9月)、埼玉県の「秩父夜祭」(12月)など、風物詩として毎年、マスコミで取り上げられる有名なお祭りも網羅。

 一昨年、「博多ギ園山笠」とともに「山・鉾・屋台行事」としてユネスコの無形文化遺産に登録された山車が巡行する祭りは、ひときわ華やかだ。

 中でも、前田利家が秀吉から拝領した、天皇を聚楽第に迎えるために使用した御所車が起源だという富山県の「高岡御車山祭」(5月)や、青森県の「八戸三社大祭」(7月31日~8月4日)の民話や歌舞伎を題材にした絢爛豪華な山車など、その美しさは格別だ。

 一方で、雪で作ったかまどから移された火のついた炭俵を縄の先につけて振り回すことで、大地を清め、無病息災・五穀豊穣・家内安全を祈願する「角館 火振りかまくら」(2月13~14日)の闇夜に炎の輪がいくつも浮かび上がる幻想的な風景をはじめ、裸身にさらしとしめなわを巡らせた若者が御酒樽を頭上に掲げながら手筒花火の豪快な火の粉の中を練り歩く長野県飯田市の「七久里神社秋季祭典 裸祭り」(9月下旬~10月上旬)や、重さ3トン、高さ10メートルもの大松明30本が夜空を照らす福島県須賀川市の「松明あかし」(11月)など、夜間に行われる火祭りは日常とはかけ離れた世界へと参加者を導いていく。

 地域の文化や伝統の豊かさ・多彩さ、そして祭りの一日に情熱を注ぎ込む人々のすさまじいパワーに圧倒される。本書を片手に祭りを求めて日本中を旅するなんて夢想を描きながら、読書のひと時を楽しむ。(パイインターナショナル 2200円+税)


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