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「世界一孤独な日本のオジサン」岡本純子著

「重老齢社会」が話題になっている。なかでも悩ましいのが「おひとりジイさん」だ。


 国立社会保障・人口問題研究所の調査によると「社会集団の中で、ほとんど、もしくは全く友達や同僚など他人と時間を過ごさない人の割合」は日本が15・3%でダントツ。

 そして、イギリスの研究者の分析では、「50~70歳の日本人の多くが孤独を感じており、特に男性にとってはより重大な問題である」という結果が出ている。

 元新聞記者で「コミュニケーション・ストラテジスト」の著者は、日本は気配りや忖度など「黙って文脈を読む」ことを過度に求める「ハイコンテクスト文化」がその背景にあるという。

 無意味にイバる高齢者が多くなりがちな半面、人をほめるのが下手。病院などでもオバサンたちの病室はおしゃべりであふれているが、男たちの病室はシーンと静まり返っている。おまけに日本では親孝行や親戚づきあい、盆暮れ正月などの年中行事もおろそかになる一方で、日本のオジサンたちの未来は孤独へまっしぐらだ。

「定年後の長い時間を、元気にはつらつと生きていくためにこそ、孤独を恐れろ、と言いたい」と著者。

(KADOKAWA 820円+税)

「おひとりさまVSひとりの哲学」山折哲雄 上野千鶴子著

 男で宗教学者で「『ひとり』の哲学」の著者と、女で社会学者で「おひとりさまの老後」の著者が正面から対峙してとことん語り合う。「最後は野垂れ死に」と口にするのは男だけ、女は言わないと社会学者。

 男がそう言うのは「最期は女性にみとってもらおうと思っている」から。それが許せない、「いい気なもんだ」と鋭く迫る。尊敬していた知性派の男たちも最晩年にはカトリックに入信したり、「父母のもとに帰りたい」と言うなんて、と悲憤慷慨。対する宗教学者は「上野さんも必ずやそこに帰っていくと思う」と応ずるが、和やかながらも議論は最後まで平行線。判定は読者次第か。

(朝日新聞出版 760円+税)

「ひとり空間の都市論」南後由和著

 こちらは変わって30代の社会学者による「ひとり」論。最近の都会はカプセルホテルにひとりカラオケ、ひとり焼き肉など「おひとりさま」向け施設が急増しているが、それは必ずしも新しくない。

 孤独と無常観を説いた「方丈記」の鴨長明も京都の街を見下ろす高台に住み、しばしば街中にも出かける都会派だった。べつに世捨て人ではなかったのだ。

 人間関係が希薄化し、「つながり」を求めるといわれる現代。しかし実は日本でも「ひとり」こそが都市の常道だったと著者はみる。むしろ現代はSNSなどの発達で「ひとりになるのが難しい」時代。だからこそ「ひとり」になれる都市に可能性があるのだとみる。

(筑摩書房 860円+税)


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