【リアルの中国】ユニコーン企業の成功の秘密は「人」にあり

公開日: 更新日:

「中国新興企業の正体」沈才彬著

 チャイナマネー、格差社会、爆買い観光、共産党独裁……。バラバラな情報の向こうに横たわるリアルの中国とは?

 中国生まれで日本の大学や商社で長年研究員をつとめてきた著者にも意外なことが頻発するのが近年の中国だ。たとえばスマホ決済。道端で小銭をせがむ物乞いまでがQRコードを記した紙を見せて通行人からめぐんでもらう姿を目撃して驚嘆したという。それが昨年の話。世界中を席巻した米ウーバーも中国では現地の滴滴出行(ディディチューシン)という新興企業に押されて、ついに撤退してしまった。

 その秘訣はレノボ創業者の娘を経営陣に迎え、信用度を上げて出資を募った上にドライバー報酬を日払いにしたこと。また、ドローンのメーカーとして世界市場1位を誇るDJIは、完璧主義で社員にそっぽを向かれた技術者の創業者が、母校の恩師や両親の友人らに営業や財務をまかせ、経済特区・深センの強みを活用したことだという。中国のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)の秘密は「人」にありなのだ。 (KADOKAWA 940円+税)

「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」中島恵著

 中国というと日本人は「4000年の歴史」と連想する。だが、実は現在の中国(中華人民共和国)は建国から70年程度の若い国。来日富裕層は日本の寺を見て鑑真の昔をしのび、中国渡来の茶を日本人が独自に洗練させた姿を愛(め)でている。彼らはディズニーランドではなく、根津美術館や唐招提寺に引かれているのだ。

 こう説く著者は元新聞記者で今はフリーの中国ウオッチャー。この20年で中国が劇的に進化しているのに日本が隣国を見る目が変化していないという。

 現代の中国人は買い物の大半をスマホ決済する。インバウンドで彼らを迎える日本人は「相手の目」で物を見る想像力を養うべきなのだ。 (プレジデント社 1500円+税)

「ルポ 中国『潜入バイト』日記」西谷格著

 元地方紙記者の中国通フリーライターが体を張って体験した中国のアルバイト。寿司屋の店員に始まり、パクリ遊園地の着ぐるみ、反日ドラマの日本兵エキストラ、ホストクラブ、婚活パーティー、そして爆買い日本ツアーのガイド。寿司屋の厨房の不衛生はショッキングだが、まあ想定内。

 面白いのは爆買いツアーや留学生寮の話。プロガイドの中国人はバックマージンのために平気で同胞にデタラメを教えるし、ギュウギュウの2段ベッドに詰め込まれた留学生たちは全く部屋を掃除しない。それでも中国人ならではの大ざっぱさで「とりあえずやってみよう」の「雇用流動性」がこのルポ企画を成功させたようだ。

 中国雑技団の皿まわしやネット検閲スタッフなど不首尾に終わった取材も多数とか。(小学館 800円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 2

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    安倍元首相銃撃裁判 審理前から山上徹也被告の判決日が決まっている理由

  5. 5

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  1. 6

    マツコ・デラックスがSMAP木村拓哉と顔を合わせた千葉県立犢橋高校とは? かつて牧場だった場所に…

  2. 7

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」