面白くてタメになる大人の教養本

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「西洋美術史」木村泰司著

 いつもの喫茶店で、はたまたガード下の飲み屋で、隣のテーブルの話につい耳をそばだててしまうことがある。美術でもスポーツでも、その文化的背景まで知っている人の話は、面白くて、深い。そんな含蓄のある話ができる〈大人〉になるために、読んでおきたいおすすめ5冊をご紹介。



 美術史は欧米人には欠かせない教養で、自分のルーツの国の美術の話ができないのは恥ずかしいことなのだ。それぞれの時代の政治、宗教、哲学などが造形として形になったものが美術や建築だという。

 例えばギリシャ彫刻がヌードなのは、人間の姿はギリシャの神々から授かったものであり、美しい人間の姿は神々が喜ぶと考えていたからだ。「男性美」を重んじた彼らには「美=善」であり、「男は顔じゃない」なんて日本的美意識は通用しない。また、カトリックのゴシック様式の大聖堂は美しいステンドグラスで飾られている。キリスト教では「神は光である」とされていて、ステンドグラスは窓からの光を美しく演出し、ゴシック様式の高い建築は人々の意識を地上から天上へと誘い、宗教的高揚感を高める効果があった。

 2500年分の美術の知識が身につく一冊。

(ダイヤモンド社 1600円+税)

「教養としてのテクノロジー」伊藤穰一著

 AI、仮想通貨など新しいテクノロジーが次々に現れているが、これらは今や現代社会の基盤なので、理解しておく必要がある。

 今話題の仮想通貨は、ドルや円といった国家通貨に対するもうひとつの選択肢になる可能性がある。そもそも「インターネットは国家の統制から離れて独立するべきだ」という意見があったが、1993年にアメリカ国家安全保障局が「クリッパーチップ」をコンピューターのチップに組み込んで音声やメッセージを暗号化し、傍受しようとした。そんな中で「新しいサイバーな国には新しい通貨が必要だ」という認識が生まれた。やがてビットコインが登場し、「信用に依存しない電子取引システム」の理念が生まれるが、仮想通貨は利益を目的とする投機の対象になっていく。

 MITメディアラボ所長の著者が仮想社会が抱える問題を平易に解説。

(NHK出版 780円+税)

「サッカー教養講座」山本昌邦、武智幸徳著

 サッカー解説者の山本氏とスポーツ担当記者の武智氏との対談集。

 武智は、ドイツ、フランス、スペインなどのサッカー大国が、アンダーエージの代表強化に力を入れているのはなぜかを考えた。これらの国ではサッカーのプロ選手になることは子供たちの憧れで、地方の中小のクラブが育てた選手を大手の都会のクラブが吸い上げるシステムも確立しているからだ。

 だが、移民の流入で、代表チームがどんどん多民族化していくことから、莫大なスポンサーマネーをつかんで選手がカネ優先になるリスクが生まれた。それを避けるために優秀な選手をアンダーエージの代表チームに集めて、ナショナルアイデンティティーを確立する早期教育を施しているのではないかという。

 片や日本のアンダーエージは「育成だから甘やかすな」と手薄な態勢で戦わせる傾向があり、日本的「清貧の思想」に、2人は危惧を抱いている。

 ロシアW杯前に読めば、よりサッカー観戦が楽しめること間違いなし。

(日本経済新聞社 850円+税)

「教養としてのプログラミング的思考」草野俊彦著

「プログラミング的思考」とは「ある目的を実現するためにコンピューターに対する命令の正しい組み合わせを論理的に導き出す考え方」である。これはコンピューターだけでなく、社会生活で問題解決のための論理的思考法として役に立つ。

 例えば、ディベートとディスカッションは同じ議論というカテゴリーにあるが、目的が異なるためプログラム的な表現が異なる。ディベートはあるテーマについて賛成と反対に分かれ、勝ち負けを決めるが、ディスカッションは合意するのも物別れになるのも可である。ディベートでは相手の主張の整合性を崩すことが必要で、反論のために、相手の論拠を分解し、キーワードを検出する↓キーワードをもとにすべての疑問の洗い出し↓疑問をもとに仮説の作成↓仮説をベースに反論を作成、という手順で進めていく。

 もろもろの問題解決のヒントの手がかりとして活用したい。

(ソフトバンクパブリッシング 1000円+税)

「教養読書」福原義春著

 前社長の急逝で突然、社長になった著者が、リーダーに関する本として選んだのがカエサルの「ガリア戦記」だ。カエサルは進軍や補給のために広い舗装路を造り、制圧した地域にローマの文明や思想を広めた。著者はルーマニアの人からワインを贈られて、ルーマニアが昔からローマ文明のワイン造りをしていたことを知った。カエサルのガリア征服はEUの始まりだったのだ。

 ルネサンス時代にモンテーニュがつづったのが「随想録」である。彼の文章は脈絡がなく、主張もない。例えば大王アレクサンドロスが戦の前に熟睡したことなどを書いている。モンテーニュは常に逆説的だから、読者はこれを自分なりに読み解かなくてはならないが、それはIT経由の情報と、古典の読み方との根本的な違いであるという。

 資生堂名誉会長が厳選したビジネス教養書15冊を紹介する。

(東洋経済新報社 1400円+税)


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