BMI指数ではウサイン・ボルトが肥満!?

公開日: 更新日:

 私たちを取り巻く世界は、政治家がつくり出したものでもなければ時代の流れによる偶然の産物でもなく、すべてがどこかの企業の損得勘定によって出来上がったもの。そんな事実を突きつけるのが、ジャック・ペレッティ著、関美和訳「世界を変えた14の密約」(文藝春秋 2200円+税)である。

 アメリカでは肥満の問題がクローズアップされているが、肥満が問題視されるようになったのは、本物の肥満が蔓延するよりもはるか以前のこと。1945年、ニューヨークのメトロポリタン生命保険会社に勤務していたルイ・ダブリンという社員が、上司を感心させるための統計資料を作っていた。そして、顧客の保険料の支払額と体重に関連性があることに気づき、ひらめいた。

 顧客の体重の基準を切り下げ、「太り過ぎ」に分類していた人をより重度の「肥満」に分類できれば、保険料は大幅に増えるはず。基準を変えるだけで健康リスクが高まったと感じさせることができ、大多数の「普通」の人を「太り過ぎ」に分類することも可能だ。

 そこで作り出したのが、身長と体重からはじき出すBMI指数。既存の指標よりもはるかに科学的に見えたことで広まっていったが、実は筋肉密度と脂肪がごっちゃになったアヤシイもの。BMIによると世界最速の男ウサイン・ボルトが、ほぼ肥満の数値になってしまう。

 しかしダブリンのひらめきは、一夜にしてアメリカ人の大半を太り過ぎか肥満に分類することに成功した。ここからダイエット産業の一大市場が生まれたわけだ。

 他にも、電球の寿命や加速するキャッシュレス、格差の正体などから、企業の企みを明らかにしていく。

【連載】ニュースこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    「立花一派」の一網打尽が司法の意志…広がる捜査の手に内部情報漏した兵庫県議2人も戦々恐々

  3. 3

    「コンプラ違反」で一発退場のTOKIO国分太一…ゾロゾロと出てくる“素行の悪さ”

  4. 4

    「ロイヤルファミリー」視聴率回復は《目黒蓮効果》説に異論も…ハリウッドデビューする“めめ”に足りないもの

  5. 5

    国分太一は人権救済求め「窮状」を訴えるが…5億円自宅に土地、推定年収2億円超の“勝ち組セレブ”ぶりも明らかに

  1. 6

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  2. 7

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  3. 8

    元プロ野球投手の一場靖弘さん 裏金問題ドン底を経ての今

  4. 9

    米中が手を組み日本は「蚊帳の外」…切れ始めた「高市女性初首相」の賞味期限

  5. 10

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層