「消滅世界」村田沙耶香著

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 雨音は、母親に自分のように「いつか好きな人と愛し合って、結婚して、子供を産むのよ」と繰り返し諭され育った。やがて、雨音は母と父が交尾して生まれた自分は稀有な存在であることに気づく。

 戦時中、男性が徴兵され、戦力になる子供を作るのが目的で人工授精の研究が飛躍的に進んだ現在、夫婦間のセックスは近親相姦とみなされ、忌み嫌われ、性欲は自分で処理するものになっていた。

 真実を知り、母親を嫌悪する雨音だが、成長するとともに自らも今は誰もしなくなったセックスを恋人とするようになる。夫とは「清潔な結婚生活」を送りながら、キャラクターや夫以外のヒトとの恋愛を楽しむ雨音の生活は、実験都市への移住で一変する。

 人間存在の根源を問う問題長編小説。

(河出書房新社 630円+税)


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