「バットランド」山田正紀著

公開日: 更新日:

「おれ」はクリーニング屋の鏡を見て驚いた。自分の実感としては30代半ばなのに、映っているのは70代のジジイだ。しかもおれは自分の名前さえわからない。店に入ってきた女が、それは鏡に映る自分の姿を認識できない認知症の症状だと言った。女は患者を連れ戻しにきた病院の職員を装って、若い男と2人でおれを店から連れだし、男が「彼はどこにいるんですか」とおれに聞いた。おれは「どの彼?」と聞いた。そのとき、後ろからつけてきたワゴン車に拉致された。ワゴン車の男は「おまえは22番だ」と言い、「おまえ、もしかしたらもとにもどっちゃったんじゃないの」と言った。

 脳に人工海馬を埋め込まれた認知症の老詐欺師をめぐる表題作ほか、4編のSF短編集。

(河出書房新社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上智大は合格者の最大40%も…2021年から急増した「補欠合格」の現状

  2. 2

    慶応幼稚舎の願書備考欄に「親族が出身者」と書くメリットは? 縁故入学が横行していた過去の例

  3. 3

    「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

  4. 4

    赤西仁と田口淳之介が始動…解散した「KAT-TUN」元メンバーたちのその後

  5. 5

    永野芽郁の「文春」不倫報道に噛みついたGACKTさんは、週刊誌の何たるかがわかっていない

  1. 6

    人間の脳内のマイクロプラスチック量は「使い捨てスプーン」サイズ…8年前より1.5倍に増えていた

  2. 7

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  3. 8

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  4. 9

    トランプ大統領が大慌て…米国債の「金利急上昇」は何が大問題だったのか?

  5. 10

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”