「声のサイエンス」山﨑広子著
著者の調査によると「自分の声を嫌い」と回答した人はなんと80%。クレオパトラは容姿はそれほどでもなかったが、声が大変魅力的だったという記録が残っている。それほど声の印象は重要だ。声の個性は母語や住居などの「環境フィードバック」で決まる。
ヨーロッパの石造りの住宅に住む人たちは声がよく反響するので声を張り上げる必要がなく、低く深い声になる。それに対して日本の住宅は木と紙で造られていて声が響かず、外から雑音が入り込む。日本人はその雑音に美を見いだした。田中角栄の浪花節のようなだみ声が日本人の心を掴んだのは、そのためである。体格や骨格からみると本来は金属的な澄んだ声の持ち主だと思われるが、戦略的にそういう声を獲得したのだろう。
声で体格、健康状態、性格、成育歴までわかるという、科学的視点で声の秘密に迫る。
(NHK出版 820円+税)