「ボケたくなければバラの香りをかぎなさい」天野惠市著

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 多くの人が認知症の入り口と考えているのが、もの忘れ。病院などによる認知症チェックでも、今日が何月何日何曜日かを言えるか、同じ話を何度もしてしまうことはないかなど、記憶に関する項目が多い。

 しかし、東京脳神経センターの専門医である著者は、もの忘れ症状は認知症がかなり進んだ段階で見られるものであり、実はこの前段階に表れる“匂いがよく分からない”という症状に注目することが大切だと説いている。嗅覚障害は、脳が病的な萎縮を始める極めて初期の段階で起きるためだ。

 匂いに関する情報を整理し、脳に収める役割を担っているのが、脳の側頭葉にある扁桃体の中の、嗅皮質と呼ばれる部分。そして、扁桃体のすぐ隣にあるのが、記憶をつかさどる海馬だ。これらの器官は単に隣り合っているだけでなく、一体となって情報処理に関わっていると考えられている。匂いが分かりにくくなるということは、嗅皮質にダメージを受けているということであり、それが海馬にも迫っているというサインとなるわけだ。

 嗅皮質の衰えを食い止めて認知症を予防するにはどうしたらよいのか。それは、いい香りを嗅ぐことだ。中でも、14種類もの匂い物質が複雑に混ざり合うことで生まれているバラの花の香りは、脳に対しても複雑な刺激を与えて脳機能を活性化すると本書。脳が香りに由来するさまざまな記憶を呼び起こしたり整理するなど、認知症予防につながる活動を促すためだという。

 頻繁にバラの花を買うのが大変な場合は、アロマオイルやお香などでも代用が可能。パズルをしたりクイズを解くなどの脳トレもいいが、今日からはバラのいい香りを楽しむ認知症予防も取り入れてみては。

(ワニブックス 1100円+税)

【連載】長生きする読書術

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