「あなたの老いは舌から始まる」菊谷武著

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 一般的なイメージでは“口の健康=歯”であり、健康長寿のためには歯のケアが欠かせない。しかし、口の機能は歯だけが担っているのではない。実は、舌の働きが衰えていると、いくら歯が丈夫でも食べたり噛んだりすることがままならなくなり、全身の健康にも悪影響を及ぼす。

 食事のとき、舌は食べ物を口の中に引きこみ、食感や温度、味を感じるほか、噛むために器用に口の中を移動させ、咀嚼(そしゃく)が終わったら舌の上でまとめて喉の方に運んでいる。一度、食事のときに自分の舌がどのように動いているかを意識してみるといい。絶妙なタイミングで咀嚼や嚥下(えんげ)を助けていることが分かるはずだ。

 しかし、舌の機能も体のさまざまな機能と同様、加齢とともに低下する。食事に時間がかかるようになった、食べ物がのみ込みにくくなったという人は、舌の老化が進んでいる可能性がある。また、舌の表面につく白っぽい舌苔(ぜったい)が増えてきたという人も要注意。本来、食べたり話したりすることで舌が動き、余分な舌苔は自然に取れてしまう。ところが、舌の動きが悪くなっている人は、舌苔が取れにくくなる。

 舌の機能は、体のトレーニング同様、毎日の努力で鍛えることも可能だ。もっとも簡単なのがガムを噛むこと。ガムを噛んでいるとき、舌は巧みな動きでガムを押さえたり移動させたりしているもの。1日3回10分程度ずつガムを噛むようにすれば、舌のよいトレーニングになる。パラパラした食べ物もお勧めで、舌が食べ物をより分けるために、いつも以上に動き、鍛える効果が抜群。野菜やナッツ類を細かくカットして作るチョップドサラダなどがお勧めだ。

 舌の働きを見直して、真の“口の健康”を手に入れよう。

 (NHK出版 1300円+税)


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