「ビンボーでも楽しい定年後」森永卓郎氏

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 人生100年時代を迎え、安倍政権ではあれやこれやと“高齢者対策”が企てられている。

 2016年の年金制度関連法案の改正により年金削減がスタート。厚生労働省の推計によると、今後25年間の平均を取ると毎年1.3%ずつ年金が減っていくという。さらに年金支給開始年齢が70歳に繰り延べられるのは、もはや明らかで、定年後の生活に不安を覚える人は少なくないだろう。

「私は昨年、60歳になり、同級生たちは定年を迎えました。同窓会などで頻繁に仲間に会うようになり話を聞くことも多いのですが、定年延長をしてくれる会社はほとんどなく、大部分の同級生が再雇用で働き、年収が3分の1になっているんですね。それでも楽しく働いているならいいんです。見ていて一番不幸な定年後は、年収の目減りを防ごうとしてやりたくもない単純労働でガンガン働いて、疲弊しているパターン。生活をコンパクトにして節約すれば年金の範囲で暮らすことはできるのに、と思わずにはいられないですね」

 本書は、節約や資産運用といった高齢期を迎えるための生活の工夫のみならず、老後の生きがいづくりにまで踏み込んだ、定年後の生活を楽しむための指南書。著者が実際に行っている81の知恵を開陳している。

「現役時代が車の運転だとすると、定年後は飛行機の操縦で上がるも下がるも腕次第。だから年金の範囲内でやっていく技術や態勢を早くから整えておくことが大事です。そして豊かに暮らすためのプラスアルファの部分を好きな仕事で稼ぐ、というのが一番ハッピーだと思うんです。それほど稼がなくてもいいなら楽しい仕事はたくさんあります。日本の男性の健康寿命は72歳。自由に動けるのが定年後10年ほどと思ったら、マインドを切り替え、遊びを仕事にしなくちゃ損ですよ」

 絵が得意ならイラストレーターとして活動してみる。カメラが趣味ならフォトストックに写真をアップして小遣い稼ぎを狙う……。ただし、「楽しい仕事ほど稼げないものですが」と著者は笑う。

「実は僕自身も10種ほどお金にならない楽しい仕事をしています。童話作家、博物館の館長、カメラマン、牛丼評論家。歌手活動もやっていて先日は中野サンプラザホールで歌ったんですよ(笑い)。歌人にもなろうと思ったんですが、知人に短歌で食えている人は俵万智さんひとりだと言われ、諦めました」

 特別な才能などない、と嘆くなかれ。何か目利きができる分野でコレクションをし、ネットオークションで稼ぐという方法がある。なかでも著者が強くお勧めするのが、ペットボトルのふたコレクションだ。

「私も集めているんですが、大学生協や富士急ハイランドでしか売っていない飲料水のふたなどレアものは人気で、売れるんです。出掛けたときに探す楽しみもできるし、安上がりなので挑戦しない手はありません。60歳を過ぎても若々しい人は自分の活躍の場を持っています。そこで小遣い稼ぎを兼ねれば一石二鳥ですよ。ボランティアを活躍の場に、という選択もありますが、私自身は労働者だと思っているので、タダ働きはしない主義です」

 普段から節約するのも、家を郊外に買ったほうがいいのも、健康を保つのもすべては老後にお金に縛られず、自由度を高めるためなのだ。

「お金は必要ですが、豊かな老後はそれだけでは実現できません。できれば複数の活躍の場を持ち、人間関係も増やしておきたいですね」

(中央公論新社 780円+税)

▽もりなが・たくろう 1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。独協大学教授。経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。「年収300万円時代を生き抜く経済学」「年収崩壊」などの著書多数。執筆のほかテレビやラジオ、講演などでも活躍中。

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