「光まで5分」桜木紫乃著

公開日: 更新日:

 主人公は、生まれ育った北海道から遠く離れた沖縄で、体を売って暮らしているツキヨ。観光マップには載っていない那覇の路地裏の店「竜宮城」で客をとって過ごしている。あるとき、歯の痛みに耐えられなくなったツキヨは客に教えられたブラックジャックというあだ名を持つ、もぐりの歯医者がいる場所を訪ねる。そこは、タトゥーをいれる人が通うタトゥーハウス「暗い日曜日」。彫師をしている万次郎と名乗る男が、ツキヨの歯の治療をしてくれた。万次郎と一緒に暮らしているヒロキとも気が合い、ツキヨは竜宮城を出て万次郎たちと一緒に暮らし始めるのだが……。

「雪虫」で第82回オール讀物新人賞、「ラブレス」で第19回島清恋愛文学賞、「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した著者による最新作。幼い頃、義理の父にされるがまま秘密の遊びをされ、母からは見て見ぬふりをされて育った女を主人公に、あたたかな場所を求めて流されるように生きてきた女性のあるがままの日常が描かれる。希望を持てないまま、死に場所を探すようにして生きるしかない人間の切なさが伝わってくる。

(光文社 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘