「行政責任を考える」新藤宗幸著
2016年に労災認定を受けた者のうち、月平均時間外労働が160時間以上が52人もいた。労働基準法では労働時間の上限を1週40時間と定めているが、「納期が迫っているとき」などの例外規定があり、実際は「青天井」に等しい。
現在、問題になっている「高度プロフェッショナル制度」は、金融アナリストなどの職が想定され、本人の同意を条件に労働時間規制から外し、週40時間を上回る分が月100時間を超えたら医師の面接指導を受けるというもの。法律は厚労省令で指定するとしているが、法律本体には規定されていない。政権の意を受けた官僚機構の裁量で拡大される可能性があり、過労死を助長する制度なのだ。政権と癒着して自律性を失った官僚組織の病理をえぐる。
(東京大学出版会 2800円+税)