「農村ガール!」上野遊著

公開日: 更新日:

 高齢化による後継者不足の猟師の世界だが、ここにきて「狩りガール」と呼ばれる女性猟師の数が増えているという。鳥獣害による農作物の被害は深刻で、その対策のひとつとしてシカやイノシシの肉を使うジビエ料理が期待されており、そうした風潮も女性猟師が増えている要因にもなっているそうだ。本書の主人公も、ひょんなきっかけから「狩りガール」になってしまう。

【あらすじ】大神華は大学時代に西麻布のレストランで食事をし、自分もこんなところで働きたいと思う。しかし、料理の才能はからっきし。そこで考えたのが、レストランへ食材を供給する会社への就職だった。

 レストランやホテルへ高級食材の納入を担当する営業部への配属が決まり念願かなったかに思ったが、勤務地は秋田営業所だった。

 かくして山奥の鷹山町へやってきたが、赴任初日に熊と遭遇。危ういところを若い大男に助けられる。出社すると、くだんの大男がいる。華の指導係の本城猛だった。華に命じられた仕事は害獣駆除。お得意の農家の作物を守るため、会社自ら駆除の協力をするという。

 猛の指導の下、華は狩猟免許獲得のために猛勉強し、折あれば山に登って実地訓練だが、猛は「女なんかには無理だ」という態度をあからさまに、容赦なくきつい仕事を命じてくる。だが、剣道部で鍛え上げられた華は根性だけは誰にも負けない。必死についていき、見事免許を取得する。そこへ、鷹山町の観光果樹園に熊が侵入したとの知らせが飛び込んでくる……。

【読みどころ】敏腕キャリアウーマンを目指していたはずが、現実は泥まみれで危険な猟師。それでも豊かな自然に囲まれて暮らすうちに仕事に対する考えが変わり、命に向き合うことの意味を知る。ひと味違ったお仕事小説。 <石>

(KADOKAWA 630円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」