「笑う書店員の多忙な日々」石黒敦久著

公開日: 更新日:

 敗戦直後の日本は空前の出版ブームで、1948年には年間の書籍刊行点数は2万6000点を記録。その後漸減、54年には1万点まで落ちるが以後伸び続け、2012年には8万点を超えた。つまり、1日に200タイトル以上の新刊が出ているわけで、それらを書店は日々扱っている。新刊のタイトルを覚えるだけでも大変だろうし、大量の本を仕分けし、売れなければ返品する。本書は、そうした書店の現場の奮闘ぶりを描いている。

【あらすじ】東京・四ツ谷駅前にある四谷書廓堂は、創業80年を超える老舗の本屋。5階建てで、各階ジャンル別に分かれているが、楠奈津は1階の文庫文芸担当で、アルバイトながら5年間、週6で働き続けている。

 今や客あしらいから仕入れまでベテランの域に達している奈津を憧れの目で見ているのが、やはり書店員志望で新人アルバイトの鈴森紗和。紗和の指導係を任された奈津は、版元・取次・書店という独特の流通形態の特性を説明しながら具体的な接客術も教え込んでいく。

 そんなある日、奈津は出版社の営業から新人作家のデビュー作のゲラを渡された。感想を聞かせてほしいというのだ。それを読んだ奈津は、この作品に凄さを感じ、全店フェアを店長に提案するが、「8万分の1の、1つだな」とけんもほろろ。それでも奈津は、紗和の協力も得て、さまざまなアイデアを駆使してこの作品を推していく……。

【読みどころ】本屋大賞など、書店員が推す本が話題になることも多いが、実際は客のクレーム処理、ビブリオバトルの開催、作家のサイン会といった日常の仕事が山積み。そんな業務をこなしながら、「売れてほしい本を売りたい」と、本を動かす書店員の熱い思いが伝わってくる。 <石>

(KADOKAWA610円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    冷房を止めて読書で体を冷やそう 文庫で読むホラー小説特集(3)「ホラーの扉」株式会社闇編著 雨穴、五味弘文ほか著

  2. 2

    「星を編む」凪良ゆう著│本屋大賞受賞作「汝、星のごとく」で語りきれなかった3つの物語

  3. 3

    盛林堂書房(西荻窪)「面陳列をしないのは、1冊でも多く棚に差したいから」

  4. 4

    「沖縄を語りつぐ」川平朝清、ジョン・カビラ著│川平朝清氏の半生と沖縄への思いを長男ジョン・カビラ氏がインタビュー

  5. 5

    「なるほどフェルメール」千足伸行監修│43年の生涯で残した作品は35点前後

  1. 6

    柳原滋雄(フリージャーナリスト)なぜ中道改革連合が失敗したかに関心

  2. 7

    「米国や英国、中国の国歌は敵と戦うことを前提とした歌でいわば民衆の歌でもあったんです」──「国家と反国歌」小島岳彦氏

  3. 8

    冷房を止めて読書で体を冷やそう 文庫で読むホラー小説特集(1)「赫き女王」北里紗月著

  4. 9

    身近なスズメのかわいさと魅力を再発見「せかいのスズメ」小宮輝之監修、中野さとるほか写真、ポンプラボ編

  5. 10

    冷房を止めて読書で体を冷やそう 文庫で読むホラー小説特集(2)「この恋が叶ったら、きっと死んでしまう」神永学ほか著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「24時間テレビ」SixTONES起用もマラソン募金額46%減で“旧ジャニーズ一極集中”は終焉へ

  2. 2

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 3

    NHK出演にSNSでは抗議の声も…彬子女王と伊藤穰一氏をつなぐ「裏千家」とブータン王室の深い関係

  4. 4

    (2)「おニャン子クラブ」の二の舞いを回避した「順位付け」という競争原理はグループを飛躍的に活性化させた

  5. 5

    「タンス預金2000万円」相続税はどうやってバレる? 税務署が追う“亡き親の出金”

  1. 6

    一発で免許停止も…9月から法定速度改正「時速30キロ」生活道路の見分け方

  2. 7

    水前寺清子(1)作詞家・星野哲郎への恩と愛称「チータ」誕生の理由

  3. 8

    自民党内に内閣改造の“タマ”がいない…女性閣僚「目玉不在」に高市首相が“苦悶”

  4. 9

    24時間マラソン完走後にSNSで“陰謀論”が拡散 星野真里に上がった「車移動説」のお粗末

  5. 10

    止まらない「人手不足倒産」…8月は過去最多を記録、もはや“ブラック企業”は成り立たない