「埋蔵金発掘課長」室積光著

公開日: 更新日:

 1990年代初頭に始まったテレビの「徳川埋蔵金シリーズ」は10年以上続いた人気番組で、いまでも間欠的に埋蔵金をめぐる番組が登場する。埋蔵金に夢を託すのはバラエティーなら楽しめるが、もし市の財政を立て直すために、役所が本気で取り組んだとしたら……。本書は、そんな奇抜な設定で物語られていく。

【あらすじ】東京の広告会社に勤めていた筒井明彦は50歳で早期退職し、故郷の山口県日照市に戻ってきた。父親が亡くなってからは、近所の道の駅への野菜配送をして気楽な一人暮らしをしていた。

 そこへ高校時代の同級生で日照市役所の秘書課長を務める野村から妙な仕事を頼まれる。近く日照市に会計検査院の検査が入ることになっており、市長の密命で埋蔵金を掘り当てて財政赤字を補填しようというのだ。冗談みたいな話だが、筒井は埋蔵金発掘課長として調査を始める。郷土史家の情報をもとにまずは小学校の裏山から探し始める。

 発掘メンバーは、唯一の市の職員で、周囲の空気が全く読めず常に問題を起こす伊藤、地元の社会人野球チームのエース・石川、そして霊能力のある巫女の妖子という変わり者揃い。妖子の「お告げ」に従い、掘ってみると本当に古銭が出てきて、市長は大喜び。その後、紆余曲折を経て、海軍工廠に眠るお宝の情報にたどり着くが、そこには思わぬ秘密が待ち受けていた……。

【読みどころ】巫女のお告げで埋蔵金を掘り当てようという現実離れした設定ではあるが、後半の戦時中の海軍工廠の話あたりから徐々に物語はシリアスなものへ移行していき、最後は戦中世代の苦い思い出が切々と語られるという、感動的な結末を迎える。このギャップが大きなカタルシスをもたらしてくれる。<石>

(小学館 730円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?