「メリーゴーランド」荻原浩著

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 1990年代前半、日本各地で地域振興の一環としてテーマパークが新設された。しかし、その多くは多大な赤字を残して失敗した。本書は、そんな地方財政のお荷物となったテーマパークを再生すべく奮闘する地方公務員の物語である。

【あらすじ】遠野啓一は東京の私大を出て都内の家電メーカーに就職したが、残業と休日出勤とつきあい酒という日常に倦み、父が死に母が1人になったのを機に、生まれ故郷の駒谷市にUターンし、市役所の職員となった。それが9年前。今は結婚して2人の子どもを抱え、可もなく不可もなく過ごしていた啓一だが、新年度からテーマパークを運営する第三セクターの「アテネ村再建対策室」に出向になった。

 巨額の赤字で苦しむテーマパーク「アテネ村」の再建を図るとはいっても、第三セクターの社員や理事は市役所のOBで占められ、対策室の面々は昼休みと退社時間だけを気にするというやる気のなさ。

 啓一も最初は右へならえの態度を貫いていたが、ひょんなことから起死回生のためのゴールデンウイーク・イベントの責任者にされてしまう。元来小心者で目立つことの嫌いな啓一だが、子どもたちに少しは気概を見せてやろうと発奮、イベントを成功させるべく奔走するのだが、目の前にはお役所特有の既得権益、前例主義、事なかれ主義という大きな壁が立ちはだかる……。

【読みどころ】普通なら幾多の困難を乗り越えてめでたしというのがこの手の物語の常道なのだが、本書はいったんはハッピーエンドを迎えるものの、その後になんとも苦い出来事が待ち受けている。地方公務員の生態を戯画的に描きながらも、感動的なラストシーンへ持っていくのは、さすがに手だれの著者ならでは。 <石>

(新潮社 670円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

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