「全体主義の克服」マルクス・ガブリエル、中島隆博著
1世紀前、世界は近代のグローバル化がもたらした世界戦争とスペイン風邪と称されるパンデミックの時代だった。国際協調が崩れ、各国が自国第一主義を取ったことで、「全体主義がさまざまな形を取りながら蔓延(まんえん)して」いき、資本主義や科学技術はそれに対する歯止めにならなかったと中島氏は言う。
一方のガブリエル氏は、人類が「新型コロナウイルスの爆発的感染の前に歩んでいたのと同じ道を歩み続ければ、わたしたちはよりひどい危機に直面することだろう」と警告。
現在直面する問題の核は、公的な領域と私的な領域の区別の破壊であり、その背景にある新たな形の全体主義に現代社会が脅かされていると指摘する。
2人の哲学者が、パンデミックに揺れる世界とその後を論じた対談集。
(集英社 860円+税)