「サハマンション」チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳

公開日: 更新日:

 舞台は、自治体が企業に売り払われた都市国家「タウン」。そこには専門知識と経済力を持つLと呼ばれる住民と、2年ごとの審査を受けて在留が認められるL2と呼ばれる人と、LでもL2でもないサハと呼ばれる人たちがいた。物語は、サハたちが流れ着いたサハマンションで展開する彼らの運命を描く。

 主軸となる登場人物は、3年前にある理由でサハマンションの住人となったジンキョンという姉とトギョンという弟のふたりだ。

 トギョンはLの小児科医でありながらサハマンションの子どもに医療行為をしていたスーと恋仲だったが、スーが病院の備品や薬を持ち出して医療をしていたことが問題になって医師免許を剥奪され、2人は心中を決意した。ところがトギョンが生き残り、殺人犯として追われる身になったことで、姉のジンキョンの周辺にも不穏な空気が漂い始める……。

 本書は、ベストセラー「82年生まれ、キム・ジヨン」の著者による2019年刊行作品の翻訳版。事実上の独裁国家タウンの格差問題や感染症の流行など、その世界は架空とは思えないほどのリアリティーに満ちている。

(筑摩書房 1650円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  2. 2

    一発退場のAぇ!group福本大晴コンプラ違反に「複数人関与」疑惑報道…旧ジャニ“インテリ”枠に敬遠の風向き

  3. 3

    だから今年の日本女子オープンはつまらない…“簡単コース”で予選カットラインは史上最少「-1」

  4. 4

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  5. 5

    囁かれていた「Aぇ!group」は「ヤベぇ!group」の悪評判…草間リチャード敬太が公然わいせつ容疑で逮捕の衝撃

  1. 6

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  2. 7

    阪神・才木浩人はドジャース入りで大谷と共闘の現実味…「佐々木朗希より上」の評価まで

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希もようやく危機感…ロッテ時代の逃げ癖、図々しさは通用しないと身に染みた?

  5. 10

    男子の試合はガラガラ…今年のANAオープンのギャラリー数を知って愕然としました