「叶うならば殺してほしい」古野まほろ著

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 2021年春、東京・井の頭公園近くの住宅街で火災が発生した。火元となったのは2階建てのごく普通の一軒家。隣家への延焼は免れたものの、2階も1階もほぼ全焼。その家から飛び出してきた高校生・仁科徹は保護されたのだが、被害家屋からは焼死した男2人と女1人、重傷の男1人が発見され、女の手には手錠がかけられていた。

 本件の担当捜査官となったのは、警視庁刑事部捜査1課キャリア管理官の箱﨑ひかり。現警察庁長官の一人娘であり、捜査が難航していた連続殺人事件を一人で解決してしまった手腕の持ち主だ。当初、民家の失火と思われた事案だったが、状況から集団監禁、集団強制性交が疑われる上、証言可能な仁科は一言も話さないため、事情がつかめず箱﨑に白羽の矢が立ったのだ。捜査を進めるうち鬼畜な監禁事件の全容が見えてくるなか、完全黙秘していた仁科が自白を始める……。

 警察庁第1種警察官としてキャリアを積み、警察大学校での主任教授を経て退官した後、第35回メフィスト賞を受賞して小説家デビューした著者による警察ミステリー。元警察官ならではの臨場感が絶品。

(講談社 2860円)

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