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「盗撮をやめられない男たち」斉藤章佳著

 ただでさえ生きづらい世の中にコロナのストレスまで加わって、依存症の誘惑はアナタのすぐそばに来ている。



 単なるスケベ心の発散と思われがちな盗撮。しかし、それは違うというのが本書だ。

 盗撮は「相手に気づかれないように、日記を盗み見る行為」。「その優越感は、日常生活では絶対に味わえない」と加害者が語ったという。盗撮の加害者として報道によく出てくるのは教師や公務員ら公共性の高い職業の人間。

 しかし、精神保健福祉士としてアルコール依存のほか、ギャンブル、薬物、性犯罪など多様な依存症の治療にあたる著者の勤務するクリニックを訪ねてくるのは、大半が「ごく普通の会社員男性」だ。

 常習者を対象としたクリニックの調査では全体の7割が10代から20代で盗撮を始めているという。また頻度は「週2回」「3回」が最多回答。単純計算でも治療に来るまでに約1000回以上も盗撮を重ねてきたような例が後を絶たないという。

 しかも盗撮は万引の常習と似た面があり、欲しくもない物を万引するのと同じように、盗撮のための盗撮に至る例も多い。学歴も「大卒」(中退含む)が49%と高学歴。

 再発防止と回復までの道筋も丁寧に解説している。

(扶桑社 1760円)

「依存症がわかる本」松本俊彦監修

 依存症は見た目でわかる。依存症は治らない。違法薬物は一度やったらやめられなくなる。著者によると、これらはどれも思い込みという。むしろたばこでもコーヒーでもスマホでも、人は誰もがなにかに依存しているもの。しかし、一点に集中しすぎると「悪い依存」になる。

 実は依存症とは一種の「自己治療」。つらい体験や心の弱さを自分でなんとかしようとして自ら何かにすがる、これが「自己治療」の始まり。たとえば「行為への依存」はギャンブルやネット、ゲームなど。

 自傷行為や摂食障害なども、依存と裏腹の「自己破壊的な行動」なのだという。いざ依存症になってしまったら周囲の支えを得て気長に取り組む。依存症になる前の状態に戻すのは無理。しかし、回復は可能。再発も想定内で「行きつ戻りつ」でなんとか前進を続けるのだ。

 気をつけなければいけないのは家族が依存症になった場合。認めたくない、世間に知られると困るといった気持ちが、かえって事態の悪化を招く。大事なのは「よい支え方」を知り、支援者に相談しながら適切に事を進めることだ。

(講談社 1540円)

「インターネットポルノ中毒」ゲーリー・ウィルソン著 山形浩生訳

 コロナ禍のステイホーム。最初はまごつき、次に慣れると、これがいいと思う。だが、次第に退屈になり、効率が落ちる。実はこれ、ネットでAVを見るときと同じなのだ。著者はアメリカの病理学者。ポルノ中毒に関する研究で高い評価を受けているという。

 ネットAVにハマるときはジャンクフードのドカ食いと同じで、「ドカ見」しがち。時には本物のセックスよりも、よくなる。

 また、次々に新しい動画に手を出したがる。だが、これが無気力や不安感、うつ状態の引き金になる。なぜなら増感した脳の中毒経路が刺激を求めるストレス系を過剰に働かせ、渇望や意志力の阻害をもたらすからだ。

 その結果、EDになってしまったりするのだが、深刻さは理解されにくい。というのも、ネットポルノ問題は公的な調査にはなりにくいからだという。その意味でも本書は貴重。身に覚えのある諸兄は、いざ書店へ。

(DU BOOKS 2420円)

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