外国人労働者を雇ったことから地元住民と対立し…

公開日: 更新日:

「ヨーロッパ新世紀」

 20世紀は「戦争の世紀」、21世紀は「テロの世紀」といわれたものだが、近ごろはむしろ「ポピュリズムの世紀」じゃないかと思うことが多い。

 現にトランプ支持者を見ても「大衆扇動」より「大衆の専制」が目につく。差別も排除も声高な居直りと自己弁護で押し通す、それが現代の大衆ではないだろうか。

 そんな不信感を思わず知らずかき立てるのが先週末封切られた「ヨーロッパ新世紀」。カンヌ映画祭の常連、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ監督の新作である。

 ルーマニアは歴史的に多民族多言語で、隣国ハンガリーやポーランドとの関係も複雑。ドラキュラで有名なトランシルバニア地方ではルーマニア語、ハンガリー語のほかドイツ語やフランス語まで話す住民が多いという。

 映画では田舎町のパン工場が人手不足でスリランカ人労働者を雇ったことから地元住民との対立が起こる。ささいな出来事がぬきさしならないトラブルへ拡大する過程が、まるでサイコホラーだ。

 宣伝の惹句に「17分間に及ぶ圧巻のクライマックス!」とあって暴力描写かと思ったら、多言語とびかう地元民の論争が「移民の手に触れたパンは汚い」と、みるみる排除に傾いてゆく場面だった。思い出したのは西部劇「真昼の決闘」で正義漢の保安官が孤立する有名な場面。まさにポピュリズムは古今を問わず、日本でもやがて……と不気味な予感さえ湧き起こるのだ。

 欧州における移民と排除問題は日本ではフランス研究の分野に厚みがある。宮島喬ほか編「包摂・共生の政治か、排除の政治か」(明石書店 3080円)はそのひとつ。そういえば映画では、移民排除派の住民から擁護派に向かってパリ襲撃の「シャルリー・エブド事件の教訓を学べ!」と怒号が飛ぶ。テロへの怒りが、排除の論理に都合よく取り込まれるのである。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    小室圭さん&眞子さんの「子供の性別」を特定したNYポストが「baby」「child」 に修正

  2. 2

    星野仙一監督は誰よりも自分を慕っていた牛島和彦をトレードの弾に、落合博満を手に入れた

  3. 3

    バナナマン日村が突然の休養発表 超売れっ子がネタにしていた肥満体形…ロケ番組多数に心配の声やまず

  4. 4

    Adoの初“顔出し”が話題 ミステリアス歌手の限界と20年非公表の「GRe4N BOYZ」との違い

  5. 5

    「自転車1メートル規制」で渋滞発生 道路交通法改正とどう付き合うべきか

  1. 6

    りくりゅうペア大逆転金メダルを呼んだ“かかあ天下” 木原龍一はリンク内外で三浦璃来を持ち上げていた

  2. 7

    家計負担の増加が続く「大学入学」…地方出身者の都心大学への進学は厳しい環境に

  3. 8

    ガソリン補助金限界でも「節約は不要」と…引くに引けない高市首相「大言壮語」の呪縛

  4. 9

    TBS「テレビ×ミセス」のスマスマ化で旧ジャニ不要論が加速 “体を張るイケメン”の専売特許は過去のもの

  5. 10

    嵐の大野智と相葉雅紀、二宮和也が通信制高校で学んだそれぞれの事情