ゴダール、ヒチコックの監督ドキュメンタリー

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「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家」「ヒッチコックの映画術」

 このところなぜか映画監督についてのドキュメンタリーがめだつ。少し前は早々と引退宣言した人気者の「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」があった。そして今週と来週末は2週つづけて「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家」と「ヒッチコックの映画術」がお目見えする。

 両者の共通点はともに故人の話であること、マニアックな映画ファン以外でも楽しめること。いやもうひとつ、作家主義の立場でそれぞれ監督と作品を語っていることだ。

 現に「ゴダール」のシリル・ルティ監督は映画の歴史がゴダールの登場によって「一変した」と強調する。長編第1作「勝手にしやがれ」はヌーベルバーグのなかでは第2陣に属するが、芸術としての映画の地位そのものを変えてしまったという。出演者や元スタッフのアーカイブ映像や新しいインタビューをちりばめ、さながら“ゴダール神話”の趣きだ。

 他方、「ヒッチコック」のマーク・カズンズ監督は博学多識の映画史ドキュメンタリーを手がける才人で、「モンタージュ映画のDJ」を自称する。今回は多作だったヒチコック作品のショットやシーンを引用しながら、監督自身がその製作手法を解説する。え、死んでるはずのヒチコックが? そうとしか思えないナレーションの声は、実はアリステア・マッゴーワンという英俳優のモノマネなのだそうだ。このフェイクな感覚こそ、ヒチコック作品の味わいに通じるのである。

 というわけで今回の本は「定本 映画術 ヒッチコック トリュフォー」(山田宏一ほか訳 晶文社 4400円)に決まり。ゴダールの盟友でもあったフランソワ・トリュフォー入魂のインタビューだ。ちなみにゴダールはセルフドキュメンタリー「JLG/自画像 ジャン=リュック・ゴダール」がブルーレイで発売されている。

 <生井英考>

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