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山口恵以子

1958年、東京都生まれ。2007年「邪剣始末」で作家デビュー。13年「月下上海」で第20回松本清張賞受賞。著書に「恋形見」「夜の塩」、「食堂のおばちゃん」「婚活食堂」「ゆうれい居酒屋」シリーズなど多数。

(5)いつもながら良い仕上がりだ

公開日: 更新日:
イラスト・卯月みゆき

 長屋に戻り、縫いかけの着物を引っ張り出した。縫物はなるべく日のあるうちに進めたい。行燈の明かりでは、細かな模様や色合いを見分けるのに難儀する。

 指抜きをはめ、針に糸を通し、絹の布に針を刺した。針が進むにつれ、糸が流れるように線を描く。この時間だけは、余計なことは考えない… 

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【連載】針の歩み、糸の流れ

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