著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

隣町珈琲(品川区・中延)元ライブハウスの広い店内に約2000冊の硬派な品揃え

公開日: 更新日:

「なかのぶスキップロード」の中ほどに、トークイベントやランチメニューの案内が額縁に収まり、幾つも。階段を下りた地階にあるブックカフェだ。

 扉を開けると、新本が並んでいて、「日本一小さな本屋さん」とあるが、結構大きいじゃない。思想、文学、ノンフィクション……。2000冊はありそうな硬派な品揃えの中に、「大ピンチずかん」が表紙を見せ、「どなたもどうぞ」との囁きが聞こえたりする。

 店の奥へ進むと、広い。50席近いカフェスペースが広がり、お客が10人ほど。壁2面に古本の本棚が続いている。ジャンルさまざま。まるで図書館。私など、作品社の「日本の名随筆」シリーズがうれしい。

「こちらは売らないですよ(笑)。私の蔵書1万冊くらいかな。自由に読んでください」と、店主で「小商いのすすめ」「株式会社という病」などで知られる作家の平川克美さん(写真右)。「広いですね」と、まず申し上げる。

「2014年に始めたときは10坪の小さな店でしたが、立ち退きになったので」

「町の大学、学びの場所」のコンセプトを拡大し、20年に再オープン

 移転先を近場で探し、見つかったのが、元ライブハウスのここ。元の店の広さ5倍、家賃2倍。改装に1000万円が必要となったが、手元資金などない。「Twitterに事情を書き、『恵んでください』と振込先を明記したら、瞬く間に500万円が集まった」って、すごすぎる。あと500万円は立ち退き料を得た。

「見返りを求めない人たちが“喜捨”してくれた。世の中には善良な人がいっぱいいるんです」

「町の大学、学びの場所」というコンセプトを拡大し、20年に再オープンしたのだ。

 実は旧知。「経営は成り立ってます?」とぶしつけに聞いたら、「週3~4ペースでイベントをしているので」と、平川さんにやり。近々もサヘル・ローズ、釈徹宗、中園ミホ、上野千鶴子ら著名人のトークが立て続けだ。圧倒的な人脈!

 さて、新本売り場へ再度行く。「昔はこんなに“自由”を求めて奔放に生きる人々がいた!」と書いたポップが目に留まり、森元斎「もう革命しかないもんね」、栗原康「超人ナイチンゲール」、松村圭一郎「くらしのアナキズム」などアナキズム関係本がずいぶん充実している。「ウチでトークをしてくださった人たちの、ですね」と店長の栗田佳幸さん(同左)。なるほど、その目で見ていくと、「学校に行きたくない」「ケア」「非暴力」もテーマなんだ、と分かってくる。じっくりと眺めている若者がいた。

◆品川区中延3-8-7 サンハイツ中延B1/℡03-6451-3943/東急池上線荏原中延駅・東急大井町線および都営浅草線中延駅から徒歩3分/午前11時(土日祝は同10時)~午後6時、月曜休み。

ウチの推し本

「隣町珈琲の本mal″03」

「2023年に出した3号は、前年に逝った小田嶋隆の特集。私は、小田嶋隆とのネット公開の対談『ふたりでお茶を』を14年から、逝去するまで8年間、毎月続けてきました。22年の夏の初めに内田樹と見舞ったときが最後の対話になり、彼は詩について、かなり冗舌に語ってくれた。その収録を含め、三島邦弘、小池昌代、伊藤比呂美ら25人が執筆しています」

 四六判、256ページ。

(合同会社 隣町珈琲発行 1650円)

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【連載】本屋はワンダーランドだ!

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