著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

ドレッドノート(清澄白河)新刊、古本6000冊、戦争、軍事、近代史が得意

公開日: 更新日:

 イギリスの戦艦を指す店名から、もしや? その通りだった。

 入り口を入って正面に「小泉悠が護憲派と語り合う安全保障」「米中戦争を阻止せよ」、右手に「玉砕の島」「硫黄島戦記」「敵兵を救助せよ!」が平積みだ。左手に、町歩きやカフェ・喫茶店、書店関係の本もそこそこ並んでいるが、店の奥へともう一歩進めば、戦争、軍事、近現代史が得意な店だと一目瞭然だ。

「家族から『家に本が多過ぎる』という圧力が高まりまして(笑)」と、店主の鈴木宏典さん(56)。営む事務機器販売会社が、いわく「オワコン」だから何か次の事業を、と考えた。自身の蔵書を放出し、関連の新刊も置こう。

「本屋が儲からないのは知っていましたが、ま、やってみようと」

 コーヒーやスイーツを味わえ、ワーキングスペースにもなるブックカフェ形式で開店して6年目の今、18坪の店内に6000冊がずらりである。

「右とか左とか関係なく、歴史は学ばないとね」

 鈴木さん、いつから、なぜ“軍オタ”に?

「小学生のときに『宇宙戦艦ヤマト』を見て、戦艦大和ってどんな船だろうと思ったのがきっかけです。世界最強の戦艦と言われたのに、結局飛行機に沈められちゃったのはなぜだろうと。第2次世界大戦へ、その背景へと興味が広がりました」

 本棚には「戦艦資料」「ルーズベルト」「第2次世界大戦」「日本陸軍」「日本海軍」。そして、「ナチス・ナチズム」「ヒトラー」「ソビエト関連」「ポーランド」「東京裁判」とインデックス。「カチンの森」「誰が一木支隊を全滅させたのか」「戦争は女の顔をしていない」が面陳列されてもいる。鈴木さんは、全タイトルの約6割は詳読したそう。

「フランス人青年が『ナチス、ヒトラーを置いてけしからん』と抗議に来て、『右とか左とか関係なく、歴史は学ばないといけないよね』と話したこともあります」と、香り高いコーヒーを運びながら。

 トークイベントの開催頻度が高く、次は3月8日。話者は「大使が語るリトアニア」の著者、リトアニア共和国のオーレリウス・ジーカス大使だ。

◆江東区平野2-3-21/℡03・5809・9008/地下鉄半蔵門線清澄白河駅B2出口・都営大江戸線A3出口から徒歩10分/11~20時(日曜13~20時)、月・火曜休み

わたしの推し本

「鷲は舞い降りた」[完全版]ジャック・ヒギンズ著、菊池光訳

「私が家族に『棺桶に入れてくれ』と言っているのがこの本。1975年に発表されたイギリスの戦争冒険小説です。第2次世界大戦中、ドイツの落下傘部隊がイギリスのある村に落下するんですが、それはチャーチル首相を暗殺するためという設定なんです。作品自体がすごく優秀で、あたかもそういう事実があったかと思わせ、いろいろな駆け引きが面白い。映画にもなりました。お薦めします」

(ハヤカワ文庫 1254円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  2. 2

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か

  5. 5

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  1. 6

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  2. 7

    三山凌輝に「1億円結婚詐欺」疑惑…SKY-HIの対応は? お手本は「純烈」メンバーの不祥事案件

  3. 8

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  4. 9

    佐藤健と「私の夫と結婚して」W主演で小芝風花を心配するSNS…永野芽郁のW不倫騒動で“共演者キラー”ぶり再注目

  5. 10

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意