「混迷の国ベネズエラ潜入記」北澤豊雄著/産業編集センター(選者:中川淳一郎)
ベネズエラは石油があるのになぜ貧困なのか
「混迷の国ベネズエラ潜入記」北澤豊雄著/産業編集センター
アメリカ軍による攻撃とマドゥロ大統領拘束という急展開を経たベネズエラ。独裁政権からの解放を喜ぶベネズエラ人の動画がネットには多数存在するが、日本の左派はトランプ大統領による攻撃を成人式の場でも非難するカオス状態になっている。
世界各国の活動家は「反トランプ」「親トランプ」「反米」「親米」でベネズエラを利用し、自身の政治的イデオロギーを主張するおなじみの展開となっている。そんなベネズエラとはどんな国なのか? 私自身は「野球とサッカーが強い国」程度のイメージしかなかったが、本書を読むと、ある程度はその国の現状が見えてくる。
本書は2021年発刊の本であり、米国との関係とマドゥロ大統領の独裁ぶりについてはそこまで描いていない。あくまでも、国内の雰囲気や危険度、麻薬密売のやり口、隣国コロンビアとの関係、そして、中南米の人々がメキシコで「野獣列車」に乗り、自由の国・アメリカを目指すさまが描かれ、ベネズエラの雰囲気を知ることができる。
世界最高峰の原油埋蔵量ということが取り沙汰されているが、ガソリンスタンドは無料で、バイクに樽を積んでそのままコロンビアで売ったりもする。だったらなぜ、そんな国が貧困に喘いでいるのか。以下の記述がある。
〈「それにしても、ベネズエラは、なぜこんな状況になっていると思う? なぜ食料がないんだろう?」フリオがスマホから顔を上げて強く見つめてきた。「政治の失敗じゃないかな。チャベス時代から反米路線の外交と社会政策ばかりに目を向けて国内の産業を伸ばそうという意思がないんだ。それじゃあ経済は伸びない」それに石油だ、とジョバニが大学の講師らしく冷静に付け加える。「石油に頼りすぎているんだ。そしてその石油が今年一月、アメリカからの経済制裁によりアメリカへの輸出が禁じられてしまった。外貨の大半を失ってドルを稼げず国内の経済が冷え込んだのが大きな原因だ」〉
本書の登場人物は当然中南米系の人々だが、著者の協力者にはまともな人間が多いものの、そうでない人々はことごとく脛に傷を抱えているような人物だらけだ。何か話を聞こうとするとカネや食料を要求されたりする。公的な立場にいる人間も、なにかと賄賂を要求してくる。
麻薬の密輸で収監された日本人も登場するが、まぁ~、自分だったらこの本の登場人物、誰とも会いたくねぇ~!と思ってしまう。私は著者ほどの好奇心もガッツもないので、せいぜい東南アジアをふらふらするぐらいにしようと思った。 ★★



















