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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

画期的な膵臓がん治療薬の登場は心臓治療も恩恵を受ける可能性がある

公開日: 更新日:

 膵臓がんに対する画期的な最新の治療薬が大きな話題になっています。「ダラクソンラシブ」という新しいタイプの飲み薬で、今年8月26日に米FDA(米国食品医薬品局)から承認されました。この新薬は分子標的薬と呼ばれるタイプで、膵臓がんの約9割に見られる「RAS(KRAS)」という遺伝子の変異の活性化を阻害し、がん細胞の増殖を抑制します。

 これまでも、RAS遺伝子を標的とした治療薬の開発は世界中で試みられてきましたが、ことごとく失敗に終わり、創薬は難しいとされてきました。RASタンパク質の構造と性質に、クリアするのが難しい高いハードルが存在していたからです。

 しかし、KRASタンパク質の特定の変異において、一時的に現れる隠れた“隙間”が発見されたことが突破口となり、開発が進みました。それも、さまざまなタイプがある遺伝子の変異を幅広くカバーし、変異の種類を問わず活性化を阻害する革新的な新薬の開発に成功したのです。

 今年5月、この新薬を使用した大規模な臨床試験の結果が発表されました。6カ国59施設で500人の膵臓がん患者を対象に、ダラクソンラシブ群(248例)と従来の化学療法群(252例)を比較したところ、全生存期間(中央値)は、従来の化学療法が6.6~6.7カ月だったのに対し、新薬は13.2カ月と約2倍に延長しました。死亡リスクが60%低下したことになります。

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