「私はあなたのニグロではない」が突きつける差別の根源

公開日: 更新日:

 米作家で、1960年代公民権運動の旗手のひとりであったジェームズ・ボールドウィンが全米で再ブームだという。きっかけはボールドウィン末期の未完成原稿を、黒人差別と暗殺の血塗られた映像と共に映像化したドキュメンタリー映画「私はあなたのニグロではない」の昨年の大ヒット。これが日本でも公開となり、話題になっている。

 何より衝撃なのは、テレビでは絶対に流れないであろう映像の数々だ。

 1950年代、白人だけの通う高校にただひとり登校する15歳の黒人少女ドロシーが罵声と嘲笑、唾まで吐きかけられるニュース映像。ビリー・ホリデイが代表曲「奇妙な果実」で歌った、木に首を吊られ、ゆらゆら揺れている黒人の惨殺映像などなど。ボールドウィンのほかメドガー、マルコムX、そしてキング牧師らの言葉は、リンチ映像などに重ねて流れると鮮烈で根源的だ。

 全米ではこうした公民権運動に対する揺り戻しがきているとされる。その先導役はトランプ大統領のアメリカ第一、白人至上主義である。この作品の異例のヒットの裏には、そうした揺り戻しに対する対抗があると明大名誉教授の越智道雄氏(英語圏政治)は指摘している。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する