著者のコラム一覧
片岡たまき

神奈川県平塚市出身。元RCサクセション・マネジャー兼衣装係。夫は「パスカルズ」のバンドマスター、ロケット・マツ氏。著書に「あの頃、忌野清志郎と」(宝島社)。

会報でファンに本音「闘病生活が大変だとか思わないで」

公開日: 更新日:

 復活祭から5カ月後の08年7月14日、清志郎は公式サイト「地味変」で左腸骨への転移を公表。この期に及んでも、「このくらいのことは覚悟してたんで、ぜんぜんヘコんでないから」とファンを心配させない気丈なコメントを残している。

「その8日前、ファンクラブ主催の『15周年感謝祭』がありました。足を痛めているという清志郎さんは、イスに座って弾き語りをすることに。弾き語り自体はこれまでにもありましたが、ずっと座ったままというのは初めて。今思うと再発の検査結果が出る直前で、体調が優れなかったのですよね。でも、取りやめにはしなかった。『オレはいいファンに囲まれている。オレは幸せ者だ』と言っていたライブ姿があまりに自然体で感激しちゃって。帰り道に思わず清志郎さんにメールをしたんですね。返信には『初の座り弾き語りでリラックスしてやったのでした。やってみて自分でもなかなか楽しかった』って。『あれでツアーに出るのも楽しそうだなと思った』と書かれていました」

 清志郎はここでも、「楽しむ」という表現を使っている。


「ファンクラブ会報(08年)のインタビューで、『……闘病生活が大変だとか思わないでもらいたいんだけど(笑)』と答えていたのを思い出しました。『重くならないでさ。病人に対する手紙じゃなくって、普通の手紙……ファンレターが読みたいな~』と、ファンに本音を伝えてる。『何事も人生経験と考え、この新しいブルースを楽しむような気持ちで治療に専念できればと思います』と世間にお知らせをした趣旨と同じですね。清志郎さんからは弱音や愚痴など一切聞いたことがない。それと、清志郎さんは『自分の喜びを惜しみなく人に分け与える人』だと思っています。枯れることのない泉みたいです」

 転移の発表から10カ月後の09年5月、表現者としての自分を選び続け、念願の「バンド」に戻ったロックスターは、終わりのない長いツアーに旅立っていった。

 (つづく)

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