著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

盗作騒動も味方に 「カメ止め」興収25億円しぶとさの秘密

公開日: 更新日:

 本欄でどこよりも早く、ヒット状況に触れた製作費約300万円の「カメラを止めるな!」。公開から3カ月が過ぎたが、いまだ週末興行ランキングの10位以内に入っている。興収は何と、ついに25億円を突破してしまった。「ありえない」という言葉を何回いえばいいのだろうか。

 最も驚くべきは、話題性が途切れないことだ。同作品の上田慎一郎監督のマスコミ露出も多く、彼の新作にも注目が集まる。盗作疑惑も出たが、逆に宣伝になった感もある。「カメラを止めるな!」はしぶとい。持続性がある。その根は作品そのものにあると思う。

 リピーターが実に多い。2回目、3回目と見る回数が増えるごとに映画の面白さが増していくからだ。これは作品の構成に要因がある。37分間のゾンビ映画(映像)のあとにつながる別の話の展開を見ながら、観客は最初のゾンビ映画に絶えず思考が引き戻される。現在進行形の映像と最初のゾンビ映画が、いわば二重写しになる。このような形で観客の思考回路を刺激する作品は、これまであまり記憶がない。

 本作は、映画の面白さの新たな発見をしたように感じる。口コミの広がり、マスコミの取り上げ方など、途切れない話題性の根本がここにあるのだと思う。映画に限らず、事件でも何でも、あらゆる事象の“賞味期限”が極端に短くなったこの時代にここまで長く話題性を引っ張ることができたのは奇跡に近い。

 公開1週目の時点で、「何としても興収1億円は超えてもらいたい」と本欄に書いた。劇場関係者から「ありえない」と言われたことを思い出す。それがいまや25億円だ。ちなみに現在、盗作騒動は裁判を介さず、告発者と製作側で話し合いがもたれているという。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー