平田満さん 機動隊と学生が対峙する中で「飛龍伝」を上演

公開日: 更新日:

 退職して行き場をなくしたサラリーマンや、ちょっとワケありの中年男の悲哀を演じさせたら右に出るものがいない平田満さん(66)。風間杜夫や石丸謙二郎ら学生時代につかこうへいと出会わなければ今の役者人生はなかったという俳優は多いが、つか氏と最も濃密な演劇人生を共有したのが平田さんだ。

  ◇   ◇   ◇

 1972年に田舎(愛知県豊橋市)から上京して早大文学部に入学しました。新入生勧誘の看板が並んでいる構内を歩いていたら、「劇団暫」という立て看板があって、呼び込みの学生に誘われるまま狭くて汚い劇研(早大演劇研究会)のアトリエに入ったのですが、芝居といっても、赤いじゅばん姿で踊ってる女の子もいるし、大声で絶叫してる男もいる。後から考えたら、状況劇場や黒テント、天井桟敷、早稲田小劇場など当時人気のアングラ劇団の芝居をコラージュしたような舞台だったんです。芝居を見たことがない私は何が何だかわけがわからない。そのエネルギーに圧倒され、後片づけを手伝ったら、そのまま打ち上げに残ることになりまして、酒盛りをしてるうちに「入部します」ということになったんです。

■初めて会ったつかさんは眼光鋭く威圧感を漂わせた“大人の男”

 ところが、夏休みで田舎に帰ったらすっかり情熱が失せてしまい、劇団に退団届を送ったら、主宰の向島三四郎さんから何度も手紙が来まして、「今度、慶応で芝居やってるスゴイ人が早稲田に来るんだ。つかこうへいという人でね。その人と一緒にやってみないか」と。根負けして、退団は撤回。大学に戻ると、「暫」と「つかこうへい事務所」の提携公演を行うことになっていました。作・演出はつかさん。初めて会ったつかさんは5歳年上だったから、私から見たら大人。痩せぎすで眼光が鋭かったですね。

 稽古の時もつかさんの威圧感にみんなが軽口を叩くような雰囲気でもない。大学の周りをマラソンしたり、へとへとになるまで踊らされたりして、高校時代にラグビーをやっていた私には演劇というより、運動部の延長のようなものでしたね(笑い)。

 たばこを吸いながら、時々「バカヤロー」という声と共に灰皿が飛んでくることもありました。もっとも、それもつかさん一流のパフォーマンスだったんでしょう。

 この後、つかさんとは、つかこうへい事務所の最後の舞台「蒲田行進曲」まで伴走することになります。

 今でも、つかさんの芝居は体にしみついていますね。先日、ある舞台に出た時に、相手役と言い合いになるシーンで自分でも分からないうちにいきなりテンションが急上昇してしまい、「あれ、この感覚はなんだか懐かしいなあ」と(笑い)。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 2

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  3. 3

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 4

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  5. 5

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  1. 6

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  2. 7

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  3. 8

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」