著者のコラム一覧
塩澤実信ノンフィクション作家

長野県生まれ。双葉社取締役編集局長などを歴任。レコード大賞元審査員。「昭和の流行歌物語」「昭和歌謡 100名曲」など著書多数。

藤圭子「新宿の女」は薄幸のイメージ戦略がズバリ当たった

公開日: 更新日:

■「存在そのものが演歌

 目の不自由な母親の手を引きながら、その三味線に合わせ、通りすがりの人たちに訴えるように大きな目を見開いて歌っていたが、人形のような顔にそぐわない低いかすれた声に特徴があった。

 石坂は「これはいける」と思ったのだろう。後日、「この子は、存在そのものが演歌。生い立ちがそのまま歌になる」と発掘秘話を明かしている。彼女を自宅に引き取り、レッスンを重ね、そうして生まれたのが「新宿の女」であった。

 さらに、石坂は売り出す作戦を練った。アッと驚く仕掛けをして、いままでの歌手にない売り方をしようと。そのひとつが夜の歌舞伎町を徹夜で練り歩くキャンペーン。「演歌の星を背負った宿命の少女」というキャッチフレーズを宣伝させながら、新宿でご当地ソングとして火をつけようとした。もうひとつは、藤圭子のイメージづくりだ。絶対に笑わない、無口で凍ったような暗い表情を通すようにと厳命された藤圭子は、忠実にそれを守り通した。


 こうした作戦は見事に当たり、暗い過去を背負った薄幸の少女は、瞬く間に時代の寵児となり、「女のブルース」「圭子の夢は夜ひらく」「命預けます」と立て続けにヒットを飛ばした。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広島新井監督がブチギレた阪神藤川監督の“無思慮”…視線合わせて握手も遺恨は消えず

  2. 2

    ヤクルト村上宗隆「メジャー430億円契約報道」の笑止…せいぜい「5分の1程度」と専門家

  3. 3

    1年ぶりNHKレギュラー復活「ブラタモリ」が好調も…心配な観光番組化、案内役とのやり取りにも無理が

  4. 4

    回復しない日本人の海外旅行…出入国数はGWもふるわず、コロナ禍前の半分に

  5. 5

    故・川田亜子さんトラブル判明した「謎の最期」から16年…TBS安住紳一郎アナが“あの曲”を再び

  1. 6

    「リースバック」で騙される高齢者続出の深刻…家を追い出されるケースも

  2. 7

    眞子さん極秘出産で小室圭さんついにパパに…秋篠宮ご夫妻に初孫誕生で注目される「第一子の性別」

  3. 8

    田中圭にくすぶり続ける「離婚危機」の噂…妻さくらの“監視下”で6月も舞台にドラマと主演が続くが

  4. 9

    千葉工大が近大を抑えて全国トップに 「志願者数増加」人気大学ランキング50

  5. 10

    三山凌輝活動休止への遅すぎた対応…SKY-HIがJYパークになれない理由