著者のコラム一覧
板坂康弘作家

東京都出身。週刊誌ライターを経て、阿佐田哲也、小島武夫が結成した「麻雀新撰組」に加わり、1972年創刊「近代麻雀」の初代編集長。小説CLUB新人賞を受賞して作家デビュー、著書多数、競輪評論でも活躍。

<3>作家になる原点は少年時代の躓きと傷

公開日: 更新日:

 だが、そのときのナイフは、阿佐田さんのものではなく、府立四中(現・戸山高校)を目指す秀才の友達の手製。阿佐田さんは預かっていただけだった。

 けが人が出て、担任教師が駆けつけてくる。

 いかなる理由があろうと、教室に刃物を持ち込むのは禁止である。教師の怒声が「おまえのものか!」と、阿佐田さんに浴びせられる。

 彼は双眸に涙をにじませ「ぼくのです」と答えた。その場面には、ナイフを作った友人もいた。だが「それは自分のものです」と、言えなかった。自分を庇ってくれていると感じたが、言葉が出なかった。

 阿佐田さんは刃物を持ち込んだ理由で、内申書の操行が「丙」に落とされ、三流の新設の中学に進学するしかなくなった。庇ってもらった生徒は進学希望の府立四中から陸軍士官学校と、当時の超エリートコースへと進学していく。

 2人の交際は晩年まで続いたが、手製のナイフのことを、阿佐田さんは決して語らなかったようだ。

「僕は劣等生なんですよ」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

  4. 4

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  5. 5

    「自維連立政権」爆誕へ吉村代表は前のめりも、早くも漂う崩壊の兆し…進次郎推しから“宗旨変え”

  1. 6

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 7

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  3. 8

    自民「聞いてないよォ」、国民・玉木氏「どうぞどうぞ」…首相指名の行方はダチョウ倶楽部のコント芸の様相

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    「ガルベスと牛乳で仲直りしよう」…大豊泰昭さんの提案を断固拒否してそれっきり