著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<26>「ナベプロ帝国」支配者・渡辺晋はなぜ賞レースに消極的だったのか

公開日: 更新日:

 巨大化した渡辺プロダクションだが、強みは何より「一枚岩」であること。渡辺晋も美佐も「ファミリー」を殊更に強調し、結束の固さは盤石に映った。しかし、レコード会社にとっては自社の専属歌手のセールスが第一で、つとに賞レースともなると、事務所の結束も「一枚岩」もさほども関係がなかった。「敵は同じナベプロの歌手」という事例が頻発するだけ厄介だったかもしれない。「森進一対布施明」「沢田研二対森進一」「布施明対小柳ルミ子」など、本人同士の思惑はともかくとして、同じ事務所の仲間が競争相手となるからだ。そこに担当マネジャー同士のライバル意識までが加わるのだから、話はややこしい。

 ただし、有史以来こうした事例は思いのほか多い。ともに織田信長の家臣でありながら、何かと対立していた柴田勝家と羽柴秀吉、孫文門下生から国を割る大乱を引き起こした蒋介石と汪兆銘、名人円生一門から骨肉の争いを演じた三遊亭円楽と円丈、90年代に自民党を真っ二つに割った小沢一郎橋本龍太郎。近親憎悪は世の常である。ライバルを蹴落とすためには手段を選ばない。おそらく、渡辺晋が賞レースに消極的だったのは“帝国”にひびが入りかねないことを危惧したからではなかったか。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」