著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「緩和治療」は高額な画期的抗がん剤と同等の効果がある

公開日: 更新日:

 手術、抗がん剤、放射線治療など、がんそのものに対する治療だけでなく、がんに伴う苦痛に対する治療も重要です。これを一般的には「緩和治療」と呼びます。

 この緩和治療に対して、多くの人は「がんが進行し、末期の状態となって治療効果が期待できず、苦痛をとる以外にできることがない状態に施されるもの」とイメージされている面があります。しかし、必ずしもそうではありません。

 もちろん、抗がん剤の副作用による苦痛の軽減も緩和治療の重要な側面です。副作用の軽減が治療継続のために重要で、副作用に対する緩和治療がうまくいかないと、抗がん剤の治療継続が困難になってしまいます。その点で、緩和治療には直接的な延命効果はないとしても、抗がん剤の効果を最大限にし、間接的に生存率を上げる効果があるといってもいいでしょう。

 がん治療が終わり、緩和ケアのみを行っている患者についても、意外な研究結果が示されています。末期の肺がん患者に対し、「早期から緩和ケアチームによるケアを提供するグループ」と「提供しないグループ」で生存率を比較したところ、緩和ケアを早期から提供したグループで生存期間が2.7カ月長かったというのです。

 画期的な抗がん剤といわれるニボルマブの生存期間に対する効果が3カ月ですから、早期の緩和ケアの提供は寿命を縮めるどころか、ニボルマブに匹敵する効果があるのです。

 緩和ケアとの比較においても、ニボルマブの値段はあまりに高すぎるといえるでしょう。

【連載】数字が語る医療の真実

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも