著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「前立腺がん検診」の効果

公開日: 更新日:

 がん検診にはあまり分がないと思われる前立腺がんですが、それでもその効果を検討するランダム化比較試験が複数行われています。今日はその結果を紹介しましょう。

 これらの研究をまとめた2013年に報告された論文では、50、60代の男性を中心(一部70代を対象)に、「前立腺特異抗原」という血液検査によるがん検診の効果を、死亡全体や前立腺がんによる死亡で検討しています。

 死亡全体、前立腺がんによる死亡、いずれについても相対危険は1で、増やしも減らしもしないという結果です。統計学的には、100→84に前立腺がん死亡を減らす可能性も残されていますが、100→117に増やす危険もあるとなっています。

 この論文では5つの研究が統合されていますが、そのうちヨーロッパで行われた研究では、前立腺がん死亡が100から84に減ったという報告も含まれています。しかし、この研究ですら、前立腺がん死亡の割合で見てみると、検診群で0.44%、検診を受けない群で0.53%と極めて小さいものです。

 この結果から言えるのは、少なくとも自治体が税金を投入して前立腺がん検診を勧めるというようなことはすべきでないということでしょうか。そんなお金があれば、別のことに投入したほうがいい。あとは個人個人で検診を受けるかどうかですが、70歳を越えたら受けない、50歳前も避けたほうがいいかもしれません。50、60代でどうかは、まあ好きに決めればいいんじゃないでしょうか。私は受けません。

【連載】数字が語る医療の真実

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」