白内障は手術しなくても薬で治る? 薬剤師語る本当のこと

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東海地方の40代薬剤師

 患者さんに薬を渡すたびに、「効果は期待できないのに……」と思うケースは少なくありません。その代表が白内障の点眼薬です。患者さんは大抵、お年寄りです。加齢で水晶体が白濁する白内障は、手術すれば一発で治るのですが、手術が怖いからなのか、薬で治したいと思っているのか、お医者さんから処方された薬に疑問を持つのは不謹慎と思っているのか、黙って使っておられます。

 しかし、先日ある中年の女性が「この薬で白内障は治るの?」と聞いてこられました。私は正直に「白内障は手術以外では治りませんよ。薬はせいぜい進行を遅らせることが期待できる程度です」と申し上げたところ、「エッ、そうなんですか?」と驚いておられました。

 実はこの薬、厚生労働省研究班が「有効性に関する十分な科学的根拠がない」と10年以上前の日本白内障学会で発表しています。私は「進行を遅らせるというのも怪しい」と感じているのですが、さすがにそれは口に出しませんでした。

 白内障は年を取れば、ほとんどの人がかかる病気です。しかし、もし薬で白内障が治るのなら、多くの人に喜ばれるに違いありません。2年ほど前の「ネイチャー」という有名な科学雑誌に、ステロイドの一種「ラノステロール」を主成分とする点眼で、人間の眼球の白内障が溶けるように小さくなったとの論文が掲載されました。あくまでも献眼された人間の眼球での実験ですが、その後、これを薬にする動きもあるようです。実用化すれば凄いことですが……。

【連載】当事者たちが明かす「医療のウラ側」

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