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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

大橋純子さんが食道がんに 声帯は化学放射線で温存できる

公開日: 更新日:

「一番大事にしてきた声を捨て、生きる道を選びました」

 音楽プロデューサーのつんく♂さん(49)が、母校近畿大の入学式で衝撃の告白をしたのは3年前でした。放射線のひとつ、陽子線治療はうまくいったものの、再発が明らかに。一度、放射線を照射したところに、もう一度照射することはできません。当時、6歳と3歳の子供がいて、子供たちのために手術に踏み切ったといわれています。その状況を考えると、手術は当然でしょう。

 しかし、大橋さんの食道がんは初発で、来年はデビュー45周年のツアーを計画しているといいます。歌手人生の節目の大イベントを控えつつ、治療するなら、切らずに治す治療を選択するのは妥当だと思います。木久扇さんと同じ考え方です。ぜひこの考え方は、皆さんも頭に入れておくといいでしょう。

 では、食道がんを化学放射線で治療した人が、再発したらどうすればいいか。食道がんは再発しやすいことが分かっていますが、この場合も、声帯を温存することが可能です。

 化学放射線治療後は、内視鏡検査などで経過をチェックすることで、再発病変も早期発見できます。そうすれば、内視鏡で切除したり、レーザーを使用する光線力学療法で治療したりできるのです。どちらも声帯にダメージを与えることはありません。

 食道がんになりやすいのは60代から。晩年にコミュニケーションに欠かせない声を失うのは、歌手でなくてもつらいものです。決して手術だけがベストではありません。

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