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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

私自身がんになって<3>自ら異常を見逃したのは魔が差した

公開日: 更新日:

 私はがん治療専門医で、東大病院で放射線治療や緩和ケアの臨床を34年も行っています。厚生労働省のがん対策推進協議会委員、文部科学省の「がん教育」の在り方に関する検討会委員などの公職も務めてきました。

 講演などでは、「日本人男性の3人に2人が、がんになる時代。がんになることも前提にした人生設計が必要」などとお話ししてきましたが、まさか自分が膀胱がんになるとは……。心のどこかで「自分は、3人に1人のがんにならない方」と思っていたのでしょう。その事実を突きつけられたときは、正直、ショックでした。

 すでにお話しした通り、脂肪肝のフォローで自分で定期的にエコー検査をしていて、左の尿管が膀胱につながる「尿管口」の近くに15ミリくらいの腫瘍を見つけたのです。すぐに妻に電話で「膀胱がんになった」と電話したのを覚えています。当然かもしれませんが、妻は私以上に動揺しており、電話口で泣かれてしまいました。

 スマートフォンで写真を撮り、すぐに後輩の泌尿器科専門医にメールを送りました。

「泌尿器科 ○○先生 当直の勤務中ですが、自身の膀胱をエコースキャンしてみたところ、添付のように腫瘍と思われる所見がありました。勝手なお願いで恐縮ですが、先生の初診をあす以降、できるだけ早急にお願いしたいと存じます」

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