著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

薬品メーカーや医療機関は高血圧の人が増えるとうれしい?

公開日: 更新日:

 高血圧の人が減るのはうれしいことで、増えるのは困ったことだというのが普通の世の中です。しかし、それだけでは成り立たないというのが現実です。現実の世の中は普通でないのが普通だというわけです。

 高血圧の人が増えるとうれしい人たちとはどういう人たちでしょうか。例えば降圧薬を作っている薬品メーカーです。ただ、それには反論があるでしょう。メーカーは高血圧の人を減らすために降圧薬を売っているわけで、薬が普及して、高血圧の人が減るのがうれしいのは同じです。増えるとうれしいわけではありません。そう説明することができます。しかし、自社の薬がたくさん売れるのもうれしいことに違いありません。

 また、患者を増やしたい医療機関というのも同様です。医療機関であっても薬品メーカー同様、放置している高血圧患者にできるだけ受診して、治療して、結果的には高血圧の人が減るのがうれしいということですが、医療機関が黒字になって、給料が上がるとうれしいというのもまた現実です。

 薬品メーカーといえども、医療機関といえども、高血圧の人が増えるとうれしいわけではなく、降圧薬が売れ、治療する人が増え、高血圧の人が減るのがうれしいというほうが実際だというのは、もっともな反論です。しかし、この2つのうれしさを区別することができるでしょうか。全部ひっくるめてうれしいというのが実際で、区別するのは無理だと思います。

 それで現実はどうなっているかというと、薬が売れることと高血圧の人が減ることは最終的には矛盾しないので、高血圧の人がいったん増えるとうれしい世の中が出来上がるというわけです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルトのドラフトは12球団ワースト…「余裕のなさ」ゆえに冒険せず、好素材を逃した気がする

  2. 2

    「汽車を待つ君の横で時計を気にした駅」は一体どこなのか?

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    コメ増産から2カ月で一転、高市内閣の新農相が減産へ180度方針転換…生産者は大混乱

  5. 5

    オリックスまさかのドラフト戦略 「凶作」の高校生総ざらいで"急がば回れ"

  1. 6

    ヤクルト2位 モイセエフ・ニキータ 《生きていくために日本に来ました》父が明かす壮絶半生

  2. 7

    オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

  3. 8

    “代役”白石聖が窮地を救うか? 期待しかないNHK大河ドラマ『豊臣兄弟』に思わぬ落とし穴

  4. 9

    福山雅治は"フジ不適切会合参加"報道でも紅白で白組大トリの可能性も十分…出場を容認するNHKの思惑

  5. 10

    バスタオル一枚の星野監督は鬼の形相でダッシュ、そのまま俺は飛び蹴りを食らった