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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

不要検査で死亡事故 医師の見落とし対策で患者ができること

公開日: 更新日:

 悔やんでも、悔やみきれないでしょう。独協医大病院(栃木県壬生町)で、CT検査に用いられた造影剤による重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こした男性(当時76)が死亡していたことが明らかになりました。

 報道によると、男性は昨年9月13日、肝細胞がん手術で入院。入院前の検査で、男性に造影剤のアレルギーがあることは、病院側も把握していたといいます。当初予定されていたCT検査は不要になったものの、電子カルテにはCT検査の記載が残り、担当医が確認を怠ったことで、CT検査が行われて容体が急変したそうです。単純な確認ミス。不要の検査が行われた上、命を奪われては、家族にとってはつらい。悔やみきれないでしょう。

 CT検査で造影剤を投与すると、軽い副作用として吐き気や動悸、頭痛、かゆみ、発疹などが見られることがあります。そういう副作用が表れる確率は5%ほど。重い副作用は呼吸困難、意識障害、血圧低下、腎不全などで、10万~20万人に1人程度に見られます。

 アレルギー体質や喘息の既往歴があると、重篤な副作用のリスクが増すため、事前の確認が欠かせません。また造影剤は腎臓から排出されるため、腎機能が悪いと副作用が表れやすく、腎機能のチェックもとても大切です。CT検査は、いろいろな臓器のがんや血管、気管支などの異常をチェックするのに役立ち、とても普及しています。しかし、その危険性が高いことは、患者さんも知っておくべきでしょう。

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