著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

免疫力低下は本当か 岡江久美子さん急死の2つの可能性

公開日: 更新日:

 ひとつは、放射線による肺炎です。岡江さんのような乳がん手術後の照射では、乳房に照射します。なるべく正常な部位を外すように綿密な計画を立てますが、それでも肺に当たるリスクがあり、まれですが、肺炎を起こすことがあるのです。晩期障害といわれて、照射後数カ月以降に見られるものでその頻度も1~2%に過ぎません。

 放射線肺炎のときに新型コロナに感染すれば、重症化の恐れがあるかもしれません。が、今回のケースでは照射後2カ月しか経過していないため、正直可能性は高いとはいえないと思います。

 もうひとつは、抗がん剤の可能性です。岡江さんが抗がん剤治療を受けていたかどうか分からないので、あくまでも一般論としてお話しします。

 乳がんの治療では、手術の前に抗がん剤で腫瘍を小さくしてから切除する方法があるほか、食道がんや子宮頚がんでは放射線と同時に抗がん剤を併用することも。どのタイミングであれ、抗がん剤を使用していたとすれば、白血球の低下リスクは低くありません。

 放射線も抗がん剤も、通院で治療できます。感染拡大の中、免疫力が低い状態で通院すると、感染リスクは高まるでしょう。しかし、がん治療とは無関係に感染した可能性もあり、個人的にはそのシナリオを最も考えます。繰り返しになりますが、詳しい経過が分からず、断言できないことはご承知ください。

 がん研有明病院では、手術を8割減らすと報じられました。今後、全国で手術の延期が相次ぎます。治療法は今まで以上にしっかり吟味し、その治療で免疫力がどうなるか。主治医に確認しておくことが大切です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性