著者のコラム一覧
粂和彦名古屋市立大教授

東大医学部卒。分子生物学者・医師(日本睡眠学会指導医)

(1)睡眠時間が短いと過食になって太りやすくなる

公開日: 更新日:

 睡眠不足は内分泌系へも悪影響を与えます。睡眠が不足するとストレスホルモンが過多になり、血圧の上昇や免疫機能の低下が起こります。動物(マウス)では、たった3日間眠らないだけでも、サイトカインストームによる免疫異常で死んでしまうことが、2023年の海外の研究で示されました。

 さらに、米国スタンフォード大学の調査では、睡眠時間が短いほど太りやすいことが示されました。睡眠時間8時間の人と5時間の人を比較したところ、食欲を増進するホルモンが、5時間の人の方が多く、食欲を抑えるホルモンはその逆になることが分かったのです。つまり、睡眠時間が短いと過食になりやすく太りやすいということです。

 肥満糖尿病のリスクを高めますが、睡眠不足だけでもインスリン抵抗性(インスリンが十分働かないこと)を高めることがわかっています。睡眠不足で血糖値が上昇しやすくなるわけです。睡眠不足が肥満、血糖値の上昇両方に関係するわけですから、当然、糖尿病のリスクも高まります。

 それだけではありません。睡眠不足は人をイライラさせ、切れやすくさせます。睡眠が不足すると、脳の感情をつかさどる扁桃体が活性化します。同時に怒りを抑え理性をつかさどる前頭前野の働きが弱くなり、怒りなどの感情がコントロールできなくなるのです。

 うつ病などの精神疾患も、睡眠とは切っても切り離せません。不眠はうつの症状でもあり、発症や再発のリスクを高めます。

 心身の健康を左右する睡眠。新年度がスタートするこの季節、ご自分の睡眠を見直してみたらいかがでしょう。(つづく)

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